謹賀新年

「十代目ーあけましておめでとうございます!」

 ドアを開け、まだ眠る十代目のベッドへと飛び乗ればベッドは大きく軋み。布団の中からは十代目の叫び声にもならない、カエルの潰れるような声が聞こえた。

「ちょっと、下りて! そこ背骨いっいだあ!?」
「そんなに照れないでくださいよーうふふ」

 背中にすりより、布団ごと抱きしめれば十代目は逃げようともがき始め布団だけが私の手の内に残り、十代目の上半身が布団の中から飛び出る。
私はこれ以上十代目を私の胸から出させまいと阻止するべく、十代目の腕を取り後ろで固めると十代目は助けを求めるようにリボーンさんや山本さんの名前を叫んだ。私が側にいるのに、なぜ他の人の名前を呼ぶんだ。

「十代目ー?」
「つ、酒くさっ! 酒飲んだの!?」

 腕を離し顔を十代目に近づけ、額に口づけをしようとすれば十代目は自由になった両手で私の口をふさぎ、顔をあからさまにしかめた。

「飲んでませんよーほら、ちみっとね、ちみっと」

 指で少しをしめせば、十代目はあんぐりと口を開け、何か思い出したかのように布団から大急ぎで這い出ると、私が開けっぱなしにしたドアから出ていった。
 そして遠くから、十代目のお母さんを呼ぶ声が聞こえそれと同時に階段をかけ降りていく音も聞こえる。
 しばらく十代目の温もりが残る布団の上で呆然と座っていたが、私は立ち上がり下へと降りていく。
 下からは賑やかな声と、時折聞こえてくる笑い声に包まれており、聞いているだけで心が温かくなってきた。
 階段へと足をかけ、一段一段ゆっくりと降りていく。その音を聞いてか、山本さんが部屋から顔をひょっこりと覗かせる。

「山本さん、あけましておめでとうございます」

 階段を降りながら言うと、山本さんは「よっ、あけましておめでとう」と軽く片手を上げた。
 私は下につくと、山本さんの背中越しに見える料理を眺め、その中にお寿司があることに気づき山本さんへと向き直る。

「あれ、山本さんが持ってきたんですか?」

 後ろを指差すと、山本さんはそれを目で追いかけ、何をさしているかわかると頷いた。
 そして私の手を取ると皆さんが集っている食卓へと歩みを進める。

「あれ親父が持っていけってうるさくてな」
「山本さんのお父さん寿司職人ですからね」

 食卓につくと皆さんそれぞれおせちを摘んでいたり、色んな物を食べていた。その中に十代目の姿もあり、近づこうとすれば山本さんの手が私を引き止め、山本さんが手に持っていた寿司を私の口の中に放り込まれる。
 いきなりの事に、むごむごと口を動かせば、口の中にまぐろの味が広がった。

「おいしい」
「だろ?」

 いつもと変わらない爽やかな笑顔を浮かべ山本さんは次の寿司をとって私の口に運ぶ。なんだか赤ちゃんになった気分だ。
 三個めの寿司を口の中に入れた時だろうか、突然チャイムが鳴り、十代目のお母さんがパタパタと世話しなく動いていく。
 私はその様子を眺めながら、口を動かす。そしてドアが開いた時、廊下へと顔を出すとそこには隼人が立っていた。

「あー隼人だ、あけましておめでとう」

 私が廊下にへばりつきながら手を振れば、隼人は持って来たであろう差入を落とし私に向かって指差してきた。失礼な奴め。

「お前、酒飲んだだろ!」
「飲んでないよ、ちみっとねちみっと」

 十代目にしたように指でしめすと、隼人は急いで靴を脱ぎ私に駆け寄れば思いっきし頭を叩いた。

「俺のこと名前で呼ぶのは酒のんでる以外ねーだろ!」
「叩きましたね! 十代目にも叩かれたことないのに!」

 頭を擦りながら隼人を見れば、隼人は思いっきりしかめっつらをし「うるせえ!」と怒鳴ってきた。
 それを横から制している山本さんの姿が見え、後ろから十代目の声も聞こえる。
 どうやら今年も賑やかになりそうだ。

(2006 01/01)
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