冬のマフラー
「みてみて銀ちゃん」
足音をたて、部屋へと滑りこむようにして入り、編んだマフラーを銀ちゃんに広げて見せた。
銀ちゃんは一瞬顔をジャンプから上げたが、すぐまた顔を戻し、まるで私をあしらうように手であっちへ行けといわれ、その無関心な態度に殺意が沸いた。
手にしたマフラーの端と端をもち、銀ちゃんの後ろに立ち、それを前に回し、交えあわすように左右に引っ張った。
一瞬にして銀ちゃんは苦しみ、ジャンプを簡単に手から落ちる。
「ちょ、お前ギブ! 銀さん死ぬ死んじゃうぅ!」
「フハハ! 乙女心を踏みにじるやからは成敗したる!」
なおいっそう力を込め締めれば、マフラーをほどこうともがいていた手は降り、銀ちゃんの首はうなだれる。
「フフフ、正義はかーつ!」
マフラーをほどき、ビシッとポーズをとれば洗濯物を抱えて部屋に入ってくる新八が、呆れた眼差しで見てきた。
「何してるんだか……」
「あ、新八ー! これあげる」
銀ちゃんの首を絞めたマフラーを新八に差し出すと新八は心底嫌そうに顔をしかめた。失礼な奴だ。
「嫌ですよ、そんなノロケが詰まったマフラーなんて」
「ノロケ詰まってないよー詰まってるの憎しみよー?」
マフラーを一回一気に伸ばしてみるとパンッといい音が鳴った。
「とにかく、今から買い物行くんで銀さんのこと頼みますね。もうすぐしたら神楽ちゃんも帰ってきますし」
「はいはーい! 行ってらっしゃい」
部屋を出ていく背中に手を振り、新八の姿が見えなくなればソファーに座り未だにクタッとしている銀ちゃんを見る。
「銀ちゃん、マフラー銀ちゃんのため作ったんだからね」
返事はないが聞こえてるのかピクリと肩が動いた。
「ほら、ちゃんとGintakiって……どあー! oがaになってる!」
あまりの切なさに私は床に手をつき涙を流すと急に手が伸び、マフラーを掴みあげられた。
「何だよあったけーじゃん」
上から降ってきた言葉に私は顔をあげるとそこには私の編んだマフラーを巻いている銀ちゃんがいた。
「……銀ちゃん室内でマフラー巻くのっておかしいと思うよ」
「お前それ以外にいうことあるだろ」
銀ちゃんは見上げる私の頭を撫でる。それは心地よく自分の頬が赤くなるのを感じた。
「ありがとう」
少しぶっきらぼうに言った言葉は銀ちゃんに聞こえたのか「いえいえーどういたしまして」と返ってくる。普通、逆じゃないのかななんて、今はどうだっていいや。
「……今ならおまけで手袋プレゼントしますよ兄さん」
「また、ぎんたきにすんなよ」
「わかんないよ」
作ってみなきゃ、そう言うと同時にドアが開き、定春をつれた神楽ちゃんが帰ってきた。
「ただいまアル」
「おかえり神楽ちゃん」
それ以上そこに居るのが、気恥ずかしくなり私は逃げるようにして神楽ちゃんの方に行くと神楽ちゃんの傘には雪が積もっており、外を覗けば灰色した空から雪がシンシンと降っていた。
新八大丈夫かな?
(2006 12/04)