内気

「銀さんが、好きなんです」

 夏の暑い日、路地裏の入口付近にいる猫の前足を上げポツリと呟けば。
 猫は一言ニャーと間の伸びた声をあげた。

「どうやったら伝えられるんだろ……」

 私は猫の足を下に下ろすと、猫はすり寄ってきて足に絡まってくる。
 昔から、人より数倍あがり症で。人より数倍とろかった。
 そのせいか、恋をしているなんて、気づいたのも最近だったりする。

「ただ、傍にいるだけで満足なんだよ。私は」

 猫の背中を撫でれば、猫は体をくねらせ。私の腕からすり抜けた。
 暑さに、涼しい所へと向かったんだろうか。
 私は立ち上がれば、おしりを叩き日がさんさんと照る道へと戻る。
 暑さに参ってしまいそうだ。

「おいおい、お前なにしてんの。こんな所で」
「ぎ、銀さん」

 道をしばらく歩いていれば、アイスをくわえた銀さんに出くわし。私は突然のことに、夏の暑さとは違う熱さにやられてしまいそうになった。
 落ち着け、落ち着くんだ。震える口に、小さく息をつく。

「ぎ、銀さんも、今日はど、どうしたんですか?」

 一言一言、どもりながらも言葉を繋いでいけば銀さんは、少し困ったように頭をかきアイスを口から出した。

「いや、こっちにも色々事情ってもんがあってね」
「あ、そ、そうですよね。すみません」

 私は、うつ向き地面を見つめる。また何か、迷惑なことを言ってしまったんじゃないだろうか。
 私は固く目を瞑り、一目散に逃げようとするが、頭を掴まれ。そのまま、また銀さんと向き合う。

「あっ、あの私はその、そうだお風呂掃除、お風呂掃除しなくては」

 だから離して、と言えず、言葉を飲み込み見上げれば。銀さんは難しい顔をし、私の手をとった。

「あ、あの」
「さっきからあのあのあのあの、お前はあのあの魔人ですかー?」
「すみません……」

 手をひかれて、連れて行かれた所は万事屋。銀さんは、私をソファーへと座らせれば毛布を持ってきて私に投げ渡す。

「あの……私お風呂掃除が」
「そんなん新八にやらしとけ、それよりお前は寝ろ。そんな真っ赤な顔をしてあっつい町中歩いてるんじゃありません」

 どことなく、優しさを交えながら叱る銀さんに、私は毛布に顔をうずくめ更に熱くなる顔を隠す。
 そんな優しくしないで、自惚れてしまうから。

END
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