夢うつつ

「しょーちゃん、しょーちゃん」

 ペチペチと皮膚を叩く音と頬に感じる甘い痛みに、勝利は眉を寄せると声の主を見ようと瞼を震わせ恐る恐る目を開けた。
 先ほどまでパソコンに向かいギャルゲーをしていたためか身体のあちらこちらが動く度に軋み、怠慢が彼の身体を襲うが、それも一瞬のことだった。
 身体を起こし、まず視界に入った人物に勝利は絶句した。否、あり得ないモノを見てしまったと目頭を押さえたのち寝るさいに外した眼鏡をかけると、再度マジマジとその姿を見つめた。

「……ゆーちゃんに、名前ちゃん?」

 勝利の声に反応をしめし、首をかしげる二人の小さな子どもに勝利は抱きしめたい衝動に駈られるが理性でそれを抑え、今置かれた自分の立ち場に頭を抱えた。きっとこれは夢なのだ。幼い頃と比べれば自分に懐かない弟と、昔からの付き合いなのに高校に入ってからというものどこか他所他所しい幼なじみに自分が知らない間に色々と溜まっていたのだろう。
 勝利は己を納得させると、立ち上がりその小さな二人を見下ろす。

「しょーちゃんあのね、遊びたいの」
「しょーちゃん遊ぼう」

 親の趣味でフリルのついた服を身にまとい自分の服を左右から引っ張る姿に勝利は内心悶えつつ、その小さな手を掴み目線を合わせるようしゃがみこむ。

「よし、なら外に出て遊ぼうか」
「わーい! しょーちゃん大好き!」
「私お砂場でお山つくるー」

 手を取り合い、キャッキャッと子ども特有の笑い声をあげ喜ぶ二人に勝利の口元は緩みきり。その表情は赤の他人が見たならば確実に変質者と声をあげそうな表情だった。


「ゆーちゃん……名前ちゃん……」
「うーわー、勝利どんな夢見てるんだよ」
「さあ……? 本人凄く幸せそうだけど」

(2008 05/06)
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