彼の名前
「小泉くんではありません!古泉くんです」
「突然何だ」
「いやあね。キョン聞いてよーもうこれはあるまじきことなんだよ」
まだ、キョンと私と有希しか居ない部室で、キョンと向かいあう形で話している私は、片手に食堂で買ったパックを持ち頭は机に乗せた。
「だから何がだ。古泉がどうしたんだ」
「うん、振り返れば十分前」
私は、パックの飲み口に口をつけ、一思いに吸いあげれば。空だと知らせる音と共にキョンのツッコミが聞こえた。
早くて何が悪い。私もさっきあったことじゃなきゃ、こんなカッカしてないさ。
さて、話はそれたが十分前。
それは、私が部室へと向かう時の事だ。放課後に、クラスで残る女の子たちの話を立ち聞きしたのが今回の問題といえよう。
放課後にクラスに残る女の子が問題なのではない。その話題が問題だったのだ。
「ねえねえ、コイズミくんって漢字どっちだっけ?」
「えー小さいじゃなかった?」
「古いだよー。あ、でも小さいだっけ……」
多分私が推測するに、彼女たちは古泉くんのファンやら、古泉くん親衛隊とかそんな類の子らなのだろう。
オーラがそんなのだった。
いやはや、それなら、名前ぐらい覚えとかなくてはならないのではないか。
仮にもファンだろう! いや、きっとまだ新しく入ったばかりでアイドルメンバーの名前が覚えられないファンみたいで、古泉くんの名前が覚えられないとかだろう。うん、そうだ。
私は、その答えに納得して部室へとまた脚を向けたと同時。
「まあ、名前なんでもいいか。きっと小泉だろうし」
ファン、あるまじき発言に驚き。私は、その場で滑り、前に出した足だけが滑ったため、開脚するはめになった。
オイオイ。だめだろう。
私は、すぐに立ち上がると「古泉は古い泉だー!」と叫びながらクラスの前をとおり、今こうやってキョンと話している。
オーケー?
「ああ、お前が変人だということはよくわかった。それでお前はどうしたいんだ」
「古泉くんの名前を覚えやすくしたい」
パックを握り潰すと、ゴミ箱にほうり投げる。ちなみにパックの中身はいちご牛乳で、ピンクのパッケージが可愛らしい。
「例えばさ、古泉だから古い泉をよろしくーとか」
「選挙か」
パックは、惜しくも外れ、私は立ち上がると、ゴミ箱に突っ込んだ。ついでに押し込んで、圧縮するのも忘れずに。
「なら、オルダァ泉とか? 古いってオルダァだよね?」
キョンはしばらく考えた後「まあ、そうだろ」と、頷く。
「しかしさー古泉って確かにあれだよね。携帯でも予想変換ではフルに打たないと出てこないよね。最初に出るの小泉だし」
「まだましだろ、俺のは古泉事態でない」
「登録しなきゃ?」
「ああ」
携帯会社よ。古泉を忘れずに。
私は、話すネタが無くなると、キョンとじゃんけんをして遊ぶことにしたが、すぐにみくるちゃんが来たことによりキョンは強制退室。
そしてしばらくすると皆揃い、今日もSOS団が始まった。
(2007 05/13)