遠回しの告白

「勉強しているなんて珍しい」

 塾の始まる少し前、塾で出された宿題以外の問題集を開けた私に、横で参考書を開き勉強をしていた宮原は覗きこみ珍しそうに呟いた。

「なーによ、私が塾以外の勉強するのそんなに珍しい?」

 私がふてくされた感じに言うと、宮原は少しためらいがちに悩んだあと素直に頷いた。
 そんな様子に私は苦笑いし、腕を伸ばし体をほぐした。肩を回すとコキッと鳴り、少し叩きこりをほぐす。

「だーれかさんのおかげで私お母さんに勉強しろってうるさく言われてさ」
「それってオレか?」

 宮原も苦笑いしながら自分を指差し尋ねてきた。
 私は頷き「そう」というと宮原は「なんでオレなんだ?」と首をかしげる。

「宮原くんは頭がよくて、宮原くんは何でも出来て、なんで貴方はそうなのよ。って一学期の通知表つきつけられた」

 私がお母さんのマネをして説明すると宮原は乾いた笑いをもらした。

「でも、オレお前のこと尊敬してるけどな」

 いかなりの言葉に私は目を見開き思わず「頭大丈夫?」と聞いてしまった。
 宮原は「大丈夫、大丈夫」と軽く流すように言い、私は少し気恥ずかしさを感じた。

「えーっと例えばどんな所が?」

私はイスを横に座り、膝に手を置き姿勢を正し宮原に尋ねると、宮原は凄く優しい笑みを浮かべ「全部」とさも当たり前のことのように言った。
 そんな、まるで口説き文句のような言葉に顔や身体中が熱くなるのを感じ、膝に置いていた手を強く握りしめる。

「私、宮原に言いたいことがあります!」

 私の言葉に宮原はおかしそうに笑い、「なにそれ」と言いながらも聞いてくれるのかシャーペンを置き私と向き合うよう体を横に向けた。

「私、宮原祐太郎のことが、」

 そこまで言った私に、もう少しの勇気がなかったせいかその声は教室に入ってきた塾の生徒達の声にかきけされる。
 入ってきた生徒達は私と宮原に挨拶をしながらそれぞれ話だし、私は少し笑みをひきつらせながら手を振り、肩を落とした。
 そんな私に、宮原は頭を撫でてきて、私は少し情けなくなり泣きたくなったが次の瞬間宮原の口が私の耳元にいきそっと内緒話をするかのように囁いた。

「後でオレも言いたいことあるから」

 言うだけ言い、離れる宮原は悪戯をしたあとの子どもみたいに凄く無邪気に笑っていた。
 私は囁かれた耳をおさえながら口をパクパクさせ「それってどういう意味?」と聞き返す前に先生がクラスに入ってきた。
 どうやらそれは塾が終わる二時間後までお預けらしい。

(2006 10/07)
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