ならば君の花嫁に

お兄さん! お宅のアヤさんを私にください!」

 ミツルの家に遊びに来た私はミツルの部屋に入り直ぐ様正座をし頭を下げ頼みごとをするとミツルは一瞬呆気にとられたがすぐ冷めた目で私を見てきた。
 私はどんな答えが返ってくるか恐る恐る顔をあげるとミツルは口を開き冷たくいいはなった。

「却下」
「そこをなんとかー! 私本気なんだから」
「却下と言ったら却下」

 食い下がる私にミツルはため息をつき一瞥すると自分のベッドに座り読みかけらしき本を読みはじめた。
 私はその様子にムッとし乱暴に歩きミツルに近づくと本を上から取り上げた。
 本を取り上げられたミツルは私の方を向くと無言で手を差し出してきた。

「返して欲しかったらアヤちゃんを嫁にください」
「だから何度も言ってるだろ? 却下」

 最後の却下は少し強めに言われ怯んだ隙にミツルは私の手から本を取り上げた。
 私はさっきまで本を持っていた手を一度見たあとその手を強く握り締めた。

「なんでダメなの?」
「なら何でいきなりそういう事言うんだ?」

 ミツルは本を横に置くと私の顔を見て聞いてきた。
 私は突然聞かれたことに戸惑い目をおよがせ、だってと繰り返し言った。

「だって……アヤちゃん大きくなったら私のお嫁になるって言ってくた……」
「それだけか?」
「あと、可愛いんだもんアヤちゃん。妹に欲しくなるタイプっていうか……だから、だから! アヤちゃんをください!」

 握り締めた手を一瞬更に強く握りしめた後ミツルの前に両手を差し出し頭を下げるとミツルはその手をペチっと軽めに叩きおとし私の頭を弱めに叩いた。

「名前、お前バカだろ」
「えぇー!? なんでそこでバカ発言でるかなー? ってかバカじゃなかったらこんな話してないし」

 私はあまりの発言に突っ込みを入れるとミツルはシラケた目で見てきた。その視線は痛く、突っ込みを入れていた私は途中で喉をつまらせた。

「アヤはまだ子どもなんだからそんなのよく言うことだろ?」
「私たちも子どもですがねー子どもに子ども言われたく……」
「うるさい」

 私がしゃべっているとミツルの手が私の口に伸びてきて塞がれた。
 最初は離せと抵抗したがミツルの無言の威圧に耐えれなくなり私は口に手をあてられたまま静かに座り込んだ。その様子にミツルは満足したのか塞いでいた手を離した。

「それに女どおしなんだから結婚た。

「それに女どおしなんだから結婚出来るわけないだろ?」
「でも偉い人言ってたー人間やればなんでも……」
「また塞がれたいの?」
「すみません」

 口を挟んだ私に向けてきた言葉と笑顔はとても楽しそうにしており、一瞬悪寒がはしり腕には鳥肌がたった。

「……っていうかね。私はアヤちゃんと暮らしたいんだよね、つか妹に欲しいんだよね。」

 小さな声で呟くとミツルはそれを聞き逃さなかったのか「そう」とそっけなく言った。
 私は話終えたのかまた本を読みはじめたミツルを見つめながら考えた、どうやったらミツルから許可がでるかを。

「……あっそっか。なんだ簡単じゃん」

 しばらく考えたあと私は閃き、声をあげるとミツルは本から顔をあげ、また何かいう気かとうんざりした顔で私の方を向いた。

「ミツル私思いついたの。これならミツルも納得いくよ」
「へぇ、そう。それで今度は何」
「あのね、私がミツルと結婚すればいいんだよ!」

 満足気に私は胸をはって言うとミツルは驚いたように目を見開き私の顔をマジマジと見てきた。
 私は笑い「いい考えでしょ」と言ったがミツルはしばらく無言で、顔をうつ向かせ頭を抱えていた。
 私は不安になり恐る恐る名前を呼ぶとミツルは私の方を横目でみると「本気か?」と聞いてきた。

「本気もなにも……それ以外思いつかないし」
「……後悔しないのか?」
「うーんしないと思う、だってミツルのこと好きだし」

 さらりと私が言うとミツルは顔を少し赤くし「バカ」と呟いた。
 それは照れ隠しのバカなのだとわかり、なぜか私も少し顔が熱くなるのを感じはにかみながら言ってやった。

「だって私、ミツルバカだもん」
2006 08/18
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