年賀葉書
お正月の昼時、郵便の人には休みがなく。毎年のように年賀状を運んで来てくれる。
カタッと郵便受けに物が入る音と共に、去っていくバイクの音に遅めの起床。
私は、パジャマなのも気にせず外へと飛び出し階段を駆けおり、ポストの中を覗いた。
中には輪ゴムで止められたハガキが入っており、表を向ければ母の名前や住所、差出人の名前が書いてあった。
輪ゴムを外し、一枚一枚巡ってわけていく。大概は母と兄のものばかりで、私宛てのは結局四枚だけだった。少し残念だが、まぁ遅れてまた届くのだろう。
自分の以外はまた輪ゴムでまとめ、私は四枚の年賀状の裏を眺め一つ一つ確認していく。
一枚目は、大きく手書きの干支が描かれており。「あけましておめでとう」と書かれていた。
後ろの宛名には三谷亘と書かれており、わざわざポストに出した亘の姿に思わず笑ってしまった。
二枚目には筆で書いたのか豪快な字に躍る「あけましておめでとう」その字を見るだけで誰から来たのかわかってしまう辺り。年賀状はハガキを通して人が見える気がした。
そして表を見れば「やっぱり」と思った。そこには小村克美と同じように躍る字で書かれていた。 残り二つは宮原とサナエからで、ホクホクと四枚と残りの年賀状を懐におさめ、私はポストに背を向け、部屋へと戻ろうと歩きだす。
その時、カタンと後ろから音がした。後ろを振り返ればドアがゆっくりと閉まっていくのが見えたが入ってきた気配はなく。少し不気味に思いながらも声をかける。
「誰か居るの?」
声に出して尋ねるが、返事は返ってくるわけがなく。私は不自然に開いている自分の家のポストを覗きこんだ。
するとそこには新たに一枚の年賀状が入っており、それは今まで見た中で一番綺麗に文字が書かれており、表を見るが差出人の名前は書いてなかった。
だけど、何故か誰からの物かわかり、自然と笑みが溢れる。
そして、ドアを開けて、外へと出れば辺りには当たり前のように人は居なかった。少し残念だったけど、私はその年賀状を握りしめ、呟いた。
「美鶴、あけましておめでとう」
今はどこに居るのかわからない君だけど、どうかこの言葉だけは届いて。
風は、容赦なく吹き付け、私の髪が舞い上がる。それを抑えようと、手をやれば年賀状は空へと舞い上がり、フッと氷が溶けるように空に交わった。
頬を撫でる風は、フワッと君の香りを運び、優しい温かさに包まれていた。
――拝啓、魔法使いの貴方へ
心を込めて、あけましておめでとう
(2007 01/04)