張った水面
朝の肌寒い時間帯。
昨晩降った雨により、所々水溜まりが出来ており。
それはよくよく見れば凍っているものがほとんどだった。
「亘、亘これとって行こうよ」
私がしゃがみこみ、水溜まりを覗きこんでいると、亘は呆れたように私の側に近寄り。
同じように上から水溜まりを見下ろした。
「そんなのとってどうするの」
「どうもしないけどさ、何か冬だなって思わない?」
私は立ち上がり水溜まりに足を乗せ体重をかけると、パキッと氷の割れる音とともに、中のまだ固まってない水がジワーッと溢れ出てきた。
そして割れた一枚を手に取ると、ジンワリと熱を奪われるのを感じる。
手の温度に、少しずつ氷が水に変わり手首を伝い地面に落ちていく。
「透かしてみれば、キラキラして綺麗だよ」
空にかざし、上を見上げると雲一つない空の太陽に氷は透け、輝きをました。まるで氷の世界に来たかのようだ。
「霜焼けになるからそろそろ触るのやめなよ」
「うん、だけどもう少しだけ」
キラキラと日が反射して、輝く氷は、次第に形を失い私の手の中で溶けてなくなった。
残ったのは手についた水と、先ほどまであった氷の冷たさだけだった。
私は冷たくなった手を亘の頬につけると、亘は鳥肌がたち身震いをし私を睨んでくる。
その様子に私は笑みが溢れ笑うと、亘は膨れっ面になり怒ったのか先々と進んでいく。私は後を追いかけ、亘の横に並べばまだ怒っているのかそっぽを向いたままだ。
「亘、今度バケツで氷作りたいね」
無視されるかな、と思った言葉は亘に届いたのか一拍置いたのちぶっきらぼうに呟く。
「また今度ね」
「うん!」
声とともに吐きだされた息は白くたちのぼり、空気に溶けて消えていった。
(2006 12/11)