秋と私と焼き芋と

 秋といえば?
 食欲の秋!

「はい、って事でジャンケンに負けた亮君焼き芋買ってくること!」
「はぁ!? んなの聞いてねーって事で却下却下」
「却下なしついでに拒否したから渋ちゃんの分追加」

 秋晴れの空の下日が暮れるのが速くなってきた気がする。
 気づくとオレンジ色の空は沈み月と星が出ていた。
 うん、なんか風流だねそう思わないかい亮君?
 私は前を歩いてまだブツブツ文句を言ってる亮君に問いかけると亮君は顔をこっちに向けてニヤリと笑った。

「名前、お前渋沢と同年代な」

 渋ちゃんと同年代?なら亮君も同年代じゃん。
 いや待てよ確か渋ちゃんって年齢詐称とか言われたりしてたな。
 えっ、てことは。

「それって私も爺くさいってことでしょうかあっきー?」
「ご名答ってかあっきーってなんだよ」
「亮君のニックネーム」

 可愛いでしょって言うと亮君はお前アホだろって言ってデコピンしてきた。

「亮君痛い」
「名前が悪い」

 顔は女の命なのよ
 そう言ったら「売れ残ったら貰ってやる」なんていうから不覚にも胸がときめいた。

「亮君のバーカ胸がキュルルンときめいちゃったじゃんか」
「ときめけときめけってかその例え変じゃねーか? 胸がキュルルンってなんだよ」
「桃色のファンタジーってかお腹減った亮君早く焼き芋焼き芋」
「焼き芋って言われてもな焼き芋屋の車通ってねーんだから買えるわけねぇだろ」

 確かに車はない、焼き芋屋のおじさんもいない。
 だけど、時々風に運ばれてくる香りは紛れもない焼き芋の匂いなんだよね。

「近くに焼き芋屋の車あるとおもうんだけどな」
「おもうだけじゃ駄目だろ」

 うんそうだよねそうだよなー。
 私は道の真ん中にしゃがみ、のの字を書いてたら奇跡がおきた!
 微かにだが「いしや〜きいも」と独特な声と発音。間違いない焼き芋屋さんだ。

「亮君焼き芋焼き芋」

 私はすぐ立ち上がり亮君の方をみたがそこには亮君は居なかった。

「亮君? ……おーい亮君何処いったんだーい」

 小さく呟いた言葉は誰の耳にも届かず風に吹かれきえていった少し不安になった。

「亮君」

 名前を呼んでもかえってこない声

「あっきー」

 突風が吹いた耳には風の吹き荒れる音しか聞こえなかった。
 なんだろこの気持ち昔にもあじわったことがあるようなないような。
 しばらくすると風はやみ頭に温かいものがあたった。
 振り向くと目の前に茶色い紙袋そこから覗いた紫色にこげめがついた物。
 紙袋から視点を上に向けると亮君が苦笑した顔をしてた。

「ほらよ焼き芋」

 私は差し出された紙袋を受けとるとジッと焼き芋をみた。
 そしたら突然頭を撫でられた。
 顔を亮君のほうに向けるとやっぱりまだ亮君は苦笑してた。

「なに泣きそうな顔してんだよ」
「だって……置いていかれたかと思って」
「俺がお前を置いていくわけねーだろ」
「うん、まあ、そうだけど……。でも不快な気分にさせた! ってことで今度はクレープ買いに行こ!」
「はあ!?」

 亮君の手を掴み、焼き芋を抱えて走り出せば、小さく紙袋の擦れる音が耳に届いた。

(2005 10/17)
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -