初詣
ザワザワとおお賑わいの神社も一日たてば静まりかえっていた。
昨日は大晦日というだけあり、長蛇の列を作っていた賽銭箱もお腹いっぱいになり、今は休憩、といった所だろうか。
「はー、さすが地元の神社! 静かだね」
「これでも昨日まで賑やかだったんだけどね」
サクサクと砂の上を下駄で歩けば下駄に砂が乗っかってくる。慣れない着物に手間取りながら歩けば、英士が手を差し出し引っ張ってくれた。
「賑やかだったほうが好き?」
「まさか」
英士は肩をあげ、笑いながら言い、私も同意するように頷く。
「それで、何お願いするの」
「うーん、なら皆がサッカーで活躍出来ますように」
お金を財布から取り出せば、お賽銭箱へと放り投げ、音を立てながら中へと落ちていく。
そして二度手を叩き手を合わせ目をつむり、お互い今年の願いを胸の中で言えば、顔を上げる。
横を見れば英士はまだ目を瞑り手を合わせており、私はその場を離れ、英士が終るのを待った。
しばらくしたら、英士は少し離れた私の方へと向かって来る。
手を振れば振り替えしてくる優しさに、今年も彼にとっていい年になればいいなと、物思いにふけていると頭を軽く叩かれた。
「英士は何お願いした?」
顔を上げ尋ねれば、英士は目をおよがせ、少しして口端を上げ、笑えば私の口に人差し指を押し付け。
「秘密」
そう言った。
私は「ケチ」と頬を膨らまして言えば英士は上手くはぐらかそうと、手を取り「行くよ」とそのまま引かれていった。繋がれた手は、この寒空に似合わないほど熱く、頬にかかる風が心地よかった。
(2007 01/03)