落ち葉清掃

 葉が舞落ちる秋の始め。
 箒で掃けども掃けども、一枚、また一枚と葉っぱがちってきて終りがみえない。
 裏庭の大きな桜の木の下で箒を持ち私は何もするわけでもなく、呆然と葉っぱと格闘している結人を見た。

「おーい、結人くんそろそろ掃除しようよ」
「はっ、よっ!」

 結人は私の言葉に耳を傾けず落ちてくる葉っぱ一つ一つを箒で素振りをするように振り、当てている。この調子では掃除はしてくれないだろう。
 私はため息をつき、結人に掃除してもらうのを諦めた。
 箒を持ち直し、足元に落ちている葉っぱを掃き、一ヶ所に集める。ただそれだけの単純作業なのに、やっていくうちに楽しくなりはじめ夢中になり掃いていると気づけば一人で裏庭を掃除していた。
 ふと結人は何をしているだろう? と振り返るとそこに、結人の姿は無く辺りを見回すと私が集めた落ち葉の上に寝そべっていた。

「何してんの結人」
「お前も横に来て寝てみなよ」

 結人は自分の横を叩き、来るように言ったが。
 私は首を横に振り断る。すると結人はむくれて「ノリわりぃ」と文句をいってきた。

「しらんがな」
「とにかく横にこいって! んで空見上げてみろ」

 結人のしつこい勧誘に、私はしぶしぶ横に座り空を見上げてみた。
 空を見上げると風にのりゆっくりと進む雲と、少し高くなった空が広がっていた。

「……で? それがどうした」
「なんだよ。お前にはセンチメンタルな気分ってのはないのかよ」
「センチメンタルな秋より食いじの秋ですから」

 私が言い捨てると結人はよっと体を起こし私は近くに落とされていた箒を拾い、結人に投げつけた。
 結人はそれを受け取ると立ち上がり尻についた葉っぱを払いおとし、私のほうを見た。

「なぁ、俺お前に言いたいことあるんだ」
「何?」

 私は少し面倒いような気がしつつも、結人を見ると結人は箒を握る手を強め、口をひらいた。

「俺、」

 口を開くと同時に突風が吹き、髪が舞上がり、葉っぱの擦れあう音が聞こえた。

 結人の声は葉っぱの擦れあう音に遮られ、風が止むと私はただポカンと口をあけ結人を見て「ごめん、なんていった?」と少しためらいながらも聞くと結人は頬をかき、そっぽを向くと「なんでもない」と言い駆け出した。
 結人の駆け出した方を見ると葉っぱは辺りに散らばっており、結人が手を振り私を呼び、箒を握り締め落ち葉を踏みしめながら私は結人の方へと走りよった。
 桜の木は葉っぱが擦れあい静かに揺れていた。

(2006 05/13)
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