15話ー6

「はい!」
「それじゃ、クドはい」

 持っていたグローブをクドに渡すとクドは見よう見まねでグローブを手にはめ、握ったり開いたりする。

「これで、ボールをとればいいんですね?」
「そうだよ」
「ま、さっきのフリスビーと一緒だと思え!」
「はい!」
「よし、じゃあ能見、あっち行ってこい」
「らじゃー!」

 恭介のバットが指す方へと向かうクドは一定の位置につくと振り返り腕を大きく振る。

「もうちょっと、距離あったほうがいいかな恭介」
「そうだな さらに右斜め後ろだ!」
「らじゃー!」

 グローブをはめたほうの手を大きくあげ、さらに後ろへと背を向けるが途中足を止めると一目散に理樹の元へと駆けよった。
 その表情は笑顔にみちており、理樹を見上げるともじもじと手を合わせる。

「あのあの、直枝さん! 私の今のらじゃーは、ネイティブっぽかったですよね?」
「え、ああ、うん、そうかも」
「わふー!」

 理樹の答えに両手をあげ飛び上がるとそのまま何事もなかったように、元の位置にもどっていった。

「犬みたいなやつだな、クー公は」
「うん」

 元の位置につくとクドは片手をあげ、私はそれに手を振り返すと恭介の足元にボールのつまった箱を置く。

「じゃあ、始めるぞ!」

 恭介はボールを取り出すとクドの方に向け打ち上げる。
 そのボールを真上にとらえれば、そのままなんなくグローブの中へとおさめていく。
 続けざまに何度も何度もとらえるその姿に、皆それぞれ驚きに声をあげていた。

「埋もれていた原石を掘り当てちまったな」
「なら、クドは合格ってことでいいんだよね?」

 投げ返されてくるクドのボールを拾い恭介を見上げれば頷く姿が目に入る。
 次のボールが飛んでこないことにだろう。首をかしげるクドに私は手招きをした。

「クド、合格だって」
「ほんとですかー?」

 皆のもとへと駆けよるクドは、理樹の言葉に目を輝かせる。

「ああ 能見クドリャフカは今日から我がリトルバスターズの仲間だ」
「わー! やったー!」

 小毬ちゃんは小さなくす玉を割り、その垂れ幕には『祝おめでとう』と書かれていた。

「仲間……」

 クドの瞳が小さく震える。

「この学校に転入してきてから初めてです。なんと言って喜んでいいか、皆さんよろしくお願いします!」
「おうよクー公!」
「これからよろしくねクド」
「またひとり美少女が加わっておねーさんは嬉しいぞ」

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