15話ー4
結果論から言うと無事と言えば無事だが、無事じゃないと言えば無事じゃない姿だった。
傷だらけの鈴にほっぺなどに絆創膏を貼っていく。
すると救急箱にストックしていた絆創膏は切れてしまい私は購買部へと予備の絆創膏を買いに理樹達と別れ食堂へと向かった。
「あっ」
その途中のことだった。
思わず声を上げると向こう側に居た彼女も顔を上げ、私の姿をみつけると鋭い眼差しが向けられた気がした。
「えっと、二木さんおはよう」
「おはよう」
挨拶をすれば普通に返ってくる声に思わずほっと胸をなでおろす。
掲示板に張り出しをしていたのだろう。近づくと二木さんの脇には数枚の紙と画鋲を持っていた。
見上げると大きな見出しで『六月の学校行事』と書かれており、見慣れた文字列が並んでいる。
「今朝」
「え?」
「今朝もあなたたちひと騒動起こしたそうじゃない」
それはきっと今朝のミッションのことを言っているのだろう。
あんなに大騒ぎをすればそれはすでに他のクラスにも知れ渡り、おのずと風紀委員の耳に入るのもたやすい。
「ご、ごめん」
思わず謝ると、二木さんからため息がもれる。
「謝るなら最初からやらないでくれる?」
「じゃ、じゃあ謝らない」
思わず反論をすると二木さんの瞳に一層の鋭さが増した。
その視線から逃れようとうつむくと、また二木さんのため息が聞こえる。
さっきからため息をつかせてばっかりだ。
「まあ、ケガ人も出てないようだしいいのだけど」
「もしかして鈴のこと心配してくれて?」
二木さんの何気ない優しさにふれ、顔を上げると呆れた眼差しをこちらに向ける二木さんの姿があった。
「ただ他の生徒が真似しないか心配しただけよ」
いや、あれは謙吾と真人だからこそ出来る至難の技なような気がしなくもないが。
そんな風紀委員らしい彼女の言葉に私はただもう一度謝るだけだった。
「それより仕事の途中だったよね」
「そうね、あなたと話してたから予定の半分も終わらなかったけど」
「そ、それはごめんなさい……」
「さっきから謝ってばかりね」
また出そうになる謝罪に、私はそれを飲み込み二木さんの前に手を出す。
突然差し出された手にだろう、訝しげに私の顔を手を交互に二木さんは見た。
「なに?」
「手伝うよ」
「別にいいわよ」
「でも」
「いつもやってる事が少しずれただけ、なんてことないわ。すぐに修正は効くもの」
まただ。また、二木さんは何かを諦めたように笑う。
その表情に私は思わず立ち尽くす。
「それより、あなたはこんなところで油を売ってていいの」
「え?」
「時間」
その声と同時に予鈴のチャイムが鳴る。
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