15話ー8

 その後練習を終え、私は一足先に寮へと戻ると一階には人の気配はなかった。
 この様子ならば二人は二階にあるクドの部屋も難なくと行けただろう。
 そう思い自室へと戻るとひと息をつきベッドへと寝転がった。
 柔らかい布団に、運動をしたあとの身体は気持ちよく睡魔を誘い、ウトウトとしかけた時だ。
 誰も通らないようにと人をはけさせたはずの廊下から声が聞こえる。
 それは理樹や真人といった声ではなく。
 恐る恐るとドアを開けると、向こうの方に歩いていく理樹達の後ろ姿が見える。
 そして先頭には見覚えのある頭が見え、ああ、二木さんに見つかったのだと悟った。
 と、いうかだここには誰も近づかないようにしていたはずなのに、なぜ彼女は来れたのだろうか。
 恭介が? 謙吾が? いや、それはおかしい真人は当人だし絶対そんなことはしないだろう。
 他の生徒たちは意思は持ってる。
 だがそれは結局は現実でのそれぞれをなぞっただけの人形であり、つまり酷い言い方をすると私たちにとっては駒でしかないということだ。
 だからこそいざという時は操ることが出来る。
 だけどそれが二木さんには効かないというのだ。
 つまり、二木さんは私たちと同じように自我を持っているということになる。

「よっ、悩みごとか?」
「恭介」

 ベッドに腰掛け、頭を悩ませていると窓から恭介が乗りだし入ってくる。
 いつもと同じ突然の登場に、さほど驚かず私は首を横に振った。

「ううん、悩みってほどではないんだけど」
「二木のことか」

 ずばりといい当てる恭介に顔をあげると不敵に笑った顔がそこにあった。

「心よんだ?」
「いや、顔がそう言っていた」
「どんな顔」

 思わず頬に手をあてるが書いてるはずもない。
 恭介はそんな私の行動にだろう、笑いそして廊下へと続くドアを見た。

「二木の事は気にするな」
「……何か知ってるの?」
「いや何も」

 肩をすくめるその姿は本当に何も知らないのだろう。

「ただ、あいつはあいつなりの考えがあってここに来たんだろ。それに自分の役割を知った上で俺たちと同じようずっと繰り返している」

 つまり、この世界を壊す敵ではないということだ。

「二木さんなりの考え……」

 それは何だろうか、考えを巡らせるが答えなど見つかるはずもなく、私は一つ息をついた。
 すると額に痛みが走る。顔を上げると恭介が指を構えており、また一つ額に痛みが走った。
 考えすぎるなという恭介なりの私に対してのメッセージなのだろう。

「そんなことより、これから暇だろ」
「質問じゃなくて断定なんだ」
「なんだ用事でもあるのか」
「いや、暇だよ」

 むしろ今から晩御飯までひと眠りしかけていたところだ。
 恭介は私の返事を聞くと笑みをうかべ私の腕をとる。

「じゃ、今から理樹達の部屋に行って野球盤でもしようぜ」
「えー……ってか理樹達なら今頃説教されてるんじゃないかな……」

 先ほど二木さんに連れて行かれたということはだ、きっと生活指導の先生の元にも連れていかれてるだろう。

「野球盤なら二人でも出来るだろ」
「部屋に侵入する気か恭介は」

 結局そうやって恭介のペースに私は巻き込まれるのだった。

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