15話ー7

 頭を深く下げるクドに皆思い思いに声をかければ、葉留佳は笑みを深くし帽子に手を乗せる。

「これからグリグリ回せるよー」

 そしていつぞやのようにグルグルと葉留佳は回す。
 クドは綺麗にその場で回転をし、次第に回る目に「わーふー」と力のない声が聞こえる。

「こらこら、目が回ってるよ……」

 手を離され目を回したクドはフラフラとさまよい、その身体を支えると遠くから声が聞こえた。

「能見さーん」

 その呼ぶ声はクドを呼んでおり、顔を上げると寮長さんの姿が丘の上にあった。

「あ、寮長さん!」
「またあなたに荷物が届いてるわよーすぐとりに来てくれるー?」
「はーい!」

 クドは寮長さんに返事をかえすと、こちらを振りかえる。

「フィンランドのおじいさまからです。いってきますねー」

 走って寮長の元へ向かう後ろ姿をストレルカとヴェルカは追いかけていく。

「手伝おうかー?」
「大丈夫ですー!」

 手を大きく振り応えるクドに理樹はそれ以上言えずにその後ろ姿を見送った。

「とは言ってたけど……」
「やっぱり心配だよね」

 よく荷物を送ってくるクドのおじいさんだがその量はいつも多く、部屋とを何往復かしているクドの姿をたびたび見かけていた。 

「今日は早めにきりあげるか」

 クドも入ってのリトルバスターズだ。
 恭介の言葉に皆賛同し、そういうこともあってその後は各自自主練をする形になった。
 理樹と真人はクドのことを気にかけてだろう。
 二人ともあの後すぐに着替えに行き、まだキャッチボールをしていた私たちに一声かけると寮へと姿を消していった。
 二人が去っていく方を見つめる鈴に、私は名前を呼べば鈴は振り返る。

「鈴も行く?」

 思わぬ言葉にだろう、鈴は首を横に思いっきりふる。
 そのいつもの姿に苦笑しつつ、私はボールを下から投げる。

「あ、あたしはいい……ただ」

 ボールを取る鈴に「ただ?」と聞き返すとまた鈴は二人が去っていたほうに顔をむけた。

「あいつら入れるのか?」
「あ……」

 思えば二人が向かっているのは女子寮だ。
 女子寮と言えば風紀委員が目を光らせており、男子生徒の来訪をあまり快く思っていない。
 というのもだ、女子寮に男子が入るなど風紀の乱れだという先生もおり、一応の規則上双方ともに互いの寮を行きかうのは無しとなっている。
 まあ、私と鈴は気にしないで男子寮に入ってしまっているが、そこは男子達が大目にみてくれているからだろう。

「まあ大丈夫じゃないかな」

 今の時間なら寮に居る人は限られているだろう。
 それにこの世界であればある程度は生徒を誘導することもたやすい。

「そうか」
「そうそう」

 鈴はボールを投げると、それは綺麗にグローブの中へと収まっていった。
 鈴のノーコンもそろそろ卒業しそうだ。


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