雷と国木田
雲行きが怪しくなってきた空に、私は帰りまで持つことを祈り教室から窓の外を見下ろしていた。雲の隙間から光が見え、時折お腹が唸るような重低音が響く。
「名字」
鞄を持ち教室のドアを開け廊下へと出ると、名前を呼ばれ。振り返ると廊下の向こう側に国木田の姿があった。
その姿は外からの仄かな光だけで照らされており、若干ホラーじみている。
「国木田、どうしたの」
「うん、ちょっと名字にお願いがあって」
それでこんな時間まで残っていたと言うのか。メールなり電話なりしてくれたらよかったのに。そう溢すと、国木田は「直接話たかったから」と窓の外へと視線を向けた。
それに私も倣えば、外が光る。目がチカチカした。
「あのさ、名字」
「うん」
「僕と付き合って欲しいんだ」
瞬間、雷鳴が響き渡り。雨が窓を打ち初めた。まるで私の心情を表しているかのごとく。
「つ、付き合うって?」
国木田からの突然の男女交際の申し出に、私は戸惑っていた。
彼からそういう浮いた噂がなかったこともあり、そして自分に対してそんな感情があるなど思いもよらなかったからだ。
尋ねてから息を呑む。国木田はケロリと、さも当たり前の事を話すように目を瞬かせ口を開いた。
「今度の土曜日、少し用事に付き合って欲しいんだ」
その瞬間、緊張の糸がほどけるように私は心の底から安堵した。ああ、なんだ。そういうことか。鞄を持ち直すと、雷が再度鳴り響く。
「なんだーそういうことか、うんいいよ」
「そういうことって」
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国木田の話を書くが。
国木田が国木田様になりそうだ。
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