女子のスカートなんて短ければ短いほどいいに決まってる。と、思ってたはずだった。あいつにだけそう思えないのは、何故だ。

「おい」
「ん?」

教室の中とか、移動教室の途中とか。あいつが歩いたり走ったり階段上ったり、そういう時にいちいちヒラヒラと揺れるスカートを見かねて、つい声をかけた。

「なに?田中」
「短すぎるんじゃねぇのか」
「何が」
「スカートだよスカート」
「ええー普通ですけど」
「下にズボンはいとけ、体操服の」
「なんでよヤダよ」
「見られてもいいのかパンツ!」
「ちょっとでかい声でパンツとか言わないでくれる!?」
「お前も言ってんだろうが!」
「もーなんで田中がそんなお父さんみたいな心配してんの?見えないってそんな簡単に」

そいつの手が無防備にスカートの裾を持ち上げる。白い太ももが一瞬見えて目眩がした。バカお前、と口にしたはずの言葉は声にならず、そいつの姿を隠すように慌てて壁際へ押し込める。

「バカヤロウ!見えるぞ!」
「田中、顔真っ赤」

そんなもん、赤くならないほうが無理ってもんだ。普段なら見る機会なんて無い隠された場所。そんなところが不意打ちで見えてしまえばそりゃ動揺もする。休み時間でざわついた教室では誰も俺たちを気にかけている様子はないが、さっきの見られてねぇだろうな。こいつの肌は誰にも見せたくない、見せないでほしい、俺以外には。…って、あれ?
ひとつの答えが頭の中を走り抜けた。すぐ近くで俺を見上げるそいつと目が合うと、今まで憎たらしいほど涼しい顔をしていたくせに、みるみるうちに耳まで赤くなっていく。

「つ…つられるんですけど」
「…スマン」

二人して、教室の隅っこで何やってんだ。そう思うのに、バカバカしいのに、目を離せないこの気持ちは。


2014.10.19

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