久しぶりに会えた休日、部活帰りに私の家にやって来た及川はとても眠そうだった。隠そうとしているけれど隠しきれていない。コタツがその眠気に拍車をかけている気がする。数秒目を閉じたまま固まっては覚醒するということをさっきから繰り返している姿を見かねて、向かいに座る及川に声をかけた。

「及川、眠いなら寝ていいよ」
「エッ?別に全然眠くないけど」
「ベッド使う?」
「あれ、俺の話聞こえてる?」
「我慢せずに寝たらいいのに」

及川が毎日頑張っていることも、部活帰りで疲れていることも知ってる。それでも会いに来てくれる優しさも知ってる。だけど私だって、及川にあまり無理はしてほしくないのだ。

「せっかく会えたのに寝てたらもったいないじゃん」
「私は及川の寝顔見てるだけでも楽しいから大丈夫」
「…そーいうこと言うからさぁ、もー…」

ほんとかわいい。そう一言残して、及川はコタツに突っ伏した。ごん、と額がぶつかる音がしたけど大丈夫だろうか。そのまま動かなくなった後頭部を見ているうちに、静かな寝息が聞こえ始めた。限界突破して眠ってしまったようだ。この体勢じゃ寝顔が見られないな。横から覗いてみたり隙間を探してみたりしたけど見えない。
やっぱり疲れてたんだろうなぁ。ベッドに運んであげたいところだけどさすがに無理だ。かすかに上下している肩を見つめる。静まり返った部屋で及川の寝息を聞きながら、だんだんとぼやけてくる意識。目の前が少しずつ、暗くなっていく。

次に私が目を開けたとき、窓の外はすっかり暗くなってしまっていた。起き上がると、頬杖をついてこっちを見ている及川と目が合う。

「あ、起きた」

ニコニコと、いやニヤニヤと、及川はなんだか嬉しそうだ。その顔を見ているうちにだんだんと頭の中がハッキリしてきて、すぐさま理解した。やらかしてしまった。

「ごめん!私まで寝ちゃってた」
「いいよ。寝顔かわいかったから」
「…何かした?」
「してないって」

身を乗り出した及川にキスされる。突然なに?視線だけで訴えるけど、彼は気にする様子もなく顔を緩ませたまま。

「起きるまでちゃんと我慢してたんだよ」
「そっか、えらいえらい」
「じゃあ、もう一回」

いや、じゃあって何?
聞く暇もなく唇が重なれば、私はもうおとなしく目を閉じるしかない。


2015.02.22

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