俺のどこを好きになってくれたんだろう。よく考える。前に一回聞いてみたら、「全部だよ」と本気の顔で返されて、あまりに恥ずかしかったからそれ以来聞いていない。恥ずかしい、でもそれ以上に嬉しくてあたたかい。彼女はいつだって俺に、新しい気持ちをくれる。
「はい。ゆずレモンでよかったよね」
「うん、ありがとう」
「まだ熱いから気をつけて」
「はーい」
「よいしょ」
「山口くんは何?」
「紅茶にした」
「一口もらってもいい?」
「いいよ」
狭いベンチ、彼女の隣に腰を下ろして、蓋を開けたペットボトルを手渡した。嬉しそうにそれを受け取った彼女は、口をつけた直後、ハッと何かに気づいて表情を強張らせる。
「どうかした?」
「…いつもワガママばっかり言ってごめんね」
「ワガママ?って何のこと?」
「えーそれは色々…今みたいに、自分のがあるくせに山口くんのやつを毎回一口もらったりとか…」
「ぶはっ」
「なんで笑うの!?」
顔を赤くしてそっぽを向いてしまった彼女をごめんごめんと宥めると、すぐに機嫌を直していつもの顔でこっちを見てくれた。
「山口くんが優しいからつい甘えちゃってさ。ダメだよね」
「そうかなー」
ワガママを言われてるなんて思ったことない。謝りたいのはむしろ俺の方だし、甘えてるのも、俺の方。
いつも素直で正直な彼女に、少しでも応えたいのに、照れくささが勝ってしまってどうしてもうまく出来ない。好きだと言われるたびに俺が嬉しくなるように、彼女もきっと喜んでくれるだろうと分かってはいるんだけど。ダメだなー、俺。家に帰ってから後悔するくらいなら言えばいいのに。
「俺の方こそごめん」
「えっ何で山口くんが謝るの?」
「うん…なんとなく」
変なの、と笑う彼女。隣にいてくれるだけで、名前を呼んでくれるだけで、笑ってる顔を見るだけで、例えようもない気持ちになる。黙った俺の腕にくっついて、彼女は楽しそうに目を細めた。
「好きだよ、山口くん」
いつももらってばかりでごめんね。大好きだよ、ありがとう。
2014.12.21
♪くるり:BABY I Love You