「あけましておめでとうございまーす!」
紅白でテンション上がりすぎた神楽ちゃんが部屋を散らかす大晦日も通り過ぎ、新年。1年の始まりをこの部屋で、この3人と迎えられたことをすごく嬉しく思う。
銀ちゃんと2人で過ごすお正月も素敵だけど、こうしてみんなでワイワイするのも楽しくて幸せなものだ。
「神楽ちゃん眠いんじゃない?」
「いつもなら寝てる時間だもんね」
「眠くないアル。今日は特別ネ」
「とか言ってるそばからウトウトしてんじゃねーか」
「してないアル」
そうは言いつつも、目がシパシパしてて眠そうだ。これは気付いたらコタツで寝ちゃってるパターンかもしれない。まあそうなったら銀ちゃんに運んでもらえばいいか。頭の中で独り言を呟きながら、黙々とミカンを剥く。
「なんか腹減らねェ?」
「え!晩ごはんあんなに食べたのに」
「あんなもんすぐ消化するわ」
「確かに僕もちょっと空きましたね」
「餅食おうぜ、餅」
「餅!?」
「あ。起きた」
さっきまで閉じかけてた神楽ちゃんの目が、餅という言葉に反応してカッと開いた。一瞬で。さすがとしか言いようがない。
「じゃあ焼いてくるね」
「あ、僕やりますよ。座っててください」
「そう?」
なんて出来る子なんだろう。素早く立ち上がった新八くんのお言葉に甘えて、餅は任せることにする。
「神楽ちゃん、お餅何個食べる?」
「とりあえず40個!」
「うんもうちょっと遠慮してね」
お餅を焼きに台所へ消えた新八くん。その後を神楽ちゃんもスキップで付いていった。片っ端からお餅を食べ尽くすつもりだと思われる。止めたほうがいいだろうか。しかし彼女の食欲を止められる者はここにはいない。
「新年早々すごい食欲だね、神楽ちゃん」
「そーだな」
「銀ちゃん食べないの?」
「食べるけどその前に」
「うん」
「ちょっとこれ見て」
「ん?」
ちゅ。
そんな音が頭の中で鳴った。手元のミカンから顔を上げた瞬間、触れたのだ。銀ちゃんの唇が、私の唇に。
「今年もよろしくな」
にやーっと、悪い顔で笑う。新八くんと神楽ちゃんが見てないことを確認してから事態をゆっくり飲み込んで、顔がどんどん熱くなるのを感じた。銀ちゃんの顔を見ていられなくてコタツに突っ伏した私の後頭部を、あったかい手がポンポンと撫でる。
「…ずるいよね本当…」
「ん?なーにが?」
私はいつになったらこの人に振り回されなくなるんだろう?悔しくて仕方ない。
今年もよろしくな、って言うけど、私は今年も来年もその先もよろしくしたいって思ってる。あなたはどう?きっと同じ気持ちだって、勝手に信じててもいいかな。
1.1