何でいつもこうなるのかなあ。縁側でため息をついてひたすら考えてみた。でもやっぱり、わからなかった。
「何やってんだアイツ、座り込んで」
「しーっ!落ち込んでるんですよ。またフラれたらしくて」
「またかよ。本当モテねーな」
「ちょっと副長そんな本当のこと言っちゃ…」
土方さんと山崎さんの会話が背中にぐさぐさと突き刺さる。くっそー後で覚えてろコノヤロウ。
目を閉じたらぼんやり浮かぶ、あの人の姿。ごめん。公園で言われたその言葉が頭の中に響いて、また大きなため息が出る。沈んだ気持ちのままゆっくりと目を開いた私は、思わず座ったままちょっと後ずさった。
「お」
「よう」
「沖田さん、いつの間に」
「お前がでっかいため息ついてる間に」
目の前にいつも通りのポーカーフェイスな沖田さんがいた。よっこいしょと立ち上がり、私の隣に腰を下ろす。
「まーたフラレたのかィ」
「ギクッ」
「ギクッて」
「ななななんで知って」
「そりゃもう真選組どころか町中で噂になってるぜィ」
「え!?」
「ってのは嘘でー」
「ええ!?」
「お前を見たらわかりまさァ」
「はあ」
「俺を誰だと思ってんでィ」
「…そりゃー沖田さまさまです」
「わかってんじゃねーか」
表情がやわらかく緩む沖田さんから、思わず目が離せなくなる。不覚にもちょっとドキッとしてしまった。
「まー、な、あれでさァ。元気だせ」
「はあ…」
「慣れただろ。そろそろ」
「慣れないですよ!!」
「でもベソベソしなくなったよな最近」
そういえばそうだ。最初の頃はフラれるたびに泣いてたけど、だんだんとそんなこともなくなった。今日だって、やっぱりまだ悲しいけど、それでも心の中は大分落ち着いてきている。
いつからだっけ。どうしてだっけ。それを考える私の頭に浮かんだのは、フラれるたびにちょっかいをかけてくる隣の彼だった。
「……」
「なんでィ人の顔じろじろ見て」
「いえ別に」
それ以上見るなら…とデコピンを繰り出す態勢に入ったから、素早く視線を逸らす。隣から舌打ちが聞こえた。
「そんじゃまあ、気晴らしに何か食いにいくか?付き合ってやらァ」
「まじですか!私、抹茶パフェ!」
「お前の奢りでな」
「いやいやそこは普通沖田さんが傷心の私に奢ってくれるんじゃ」
「やだ」
「えー!」
ひらりと軽やかに立ち上がる沖田さん。手招きされて、私も腰を上げた。
「お前のフラれ記録がどこまで続くのかが最近一番の楽しみでさァ」
「止めますよ、記録」
「できるもんなら」
睨みつけると、沖田さんはニヤリと笑みを浮かべる。
「ま、安心しなせェ。いざとなったら俺がお前をもらってやらァ」
「え〜沖田さんが…?」
「何でィその不服そうな顔」
不満げにそっぽを向いたのは、赤くなってるであろう顔を見られたくなかったから。そんなのきっとお見通しなんだろうけど。
何も言わずに抹茶パフェをご馳走してくれた沖田さんは、なんだかんだで面倒見のいい優しい人。
意地悪だけど、乱暴だけど、そんなこの人に、いつも私は救われている。
12.3