ゆっくりと開けた目に、真っ白な天井が映った。あれ、うちの天井あんな色だったっけ?なんか布団もやけに大きいしふかふかだし…。
そこまで考えたところでゆっくりと体を起こした。自分が何も着ていないことに気づいて、慌てて布団を口元まで被る。


「やっと起きたな」


声がした方に目をやる。ゆるく浴衣を着た総悟がいた。


「…総悟」
「水。飲むかィ?」
「あ、うん」
「ん」


手渡されたコップに口をつけて、まだ寝ぼけてる頭をフル回転させる。
…そうだ、そうだった。だんだん思い出してきた。昨日は久しぶりに総悟とデートで、楽しくて幸せで、気づいたら怪しい通りを歩いてて、私なにも言ってないのに「なに、疲れたって?じゃあ休憩していこうぜィ」とか言われてホテルに引っ張りこまれたんだった。そして。


「……」
「なーに赤くなってんでィ」
「えっ!!」
「夜のこと思い出してんだろ。やらし〜い」
「ち、違うから!この部屋なんか暑いんだもん!」
「ふう〜ん」


いやらしい笑みを浮かべる総悟。腹立つ。だってそんなん、仕方ないじゃん。作戦なのか天然なのか知らないけど総悟の奴浴衣の胸元はだけてるし、なんか妙に表情が色っぽいし。
昨夜の強引だけど優しい触れ方とか、乱れた呼吸とか、どうしても思い出してしまう。…変態なんだろうか、私。
それよりも、布団を被ってるとはいえ、いつまでも裸でいるのは恥ずかしい。空になったコップを返してキョロキョロと辺りを見回す。


「なに探してんでィ」
「んー…」
「これ?」
「え……ギャアアアア!」


未だかつてないほど素早い動きで、総悟が持っているものを奪いとる。
し…ししし下着!下着掴まれた!しかも凝視されたァァァ!!


「今さら下着くらいで何騒いでんだか。いっつも俺が脱がしてやってるだろーが」
「それとこれとは別なの!なんか別なの!」
「あっそ」


もーほんとこの人心臓に悪い。やめてほしい。呼吸を整えて、布団の中でもぞもぞと下着を身につけた。
私も浴衣を着とこう、と枕元のそれに手を伸ばす。その手を、いつのまに移動してきたのか、総悟に掴んで止められた。


「? なに…ん!」


突然のキスで口を塞がれる。侵入してきた舌に気をとられている内に、布団の上に体を押し倒された。
耳を舐められる。足を撫でられる。そのたびに私の体は大きく揺れて、総悟は楽しそうに口角をつり上げた。せっかく着けた下着も、簡単に脱がされてしまう。


「あああ朝っぱらから何すんのよ!」
「いやァ昨日の可愛いお前を思い出したら興奮してきちまって」
「はあ?」
「そうそう、それでさァ」


涙目になってしまっている私の目元に口づけて、また笑う。


「その顔。すげーいい」


変態だ。知ってたけど。


「昨日、さ、散々好き放題やったくせに…」
「あんなんじゃ俺の気は済まねーぜィ」
「…け」
「け?」
「ケダモノ」


さっきよりも随分と優しくキスをされる。そして可愛い仮面を被ったケダモノは、にやりと意地悪く笑った。


「お前限定でな」


ああもう、どうしよう。
あなたになら何をされてもいいなあ、なんて。相当やられてしまってる、私。


5.21

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