空の真ん中で輝く太陽。熱い風が、縁側の風鈴を小さく鳴らした。


「どーよ?」
「おいしいー」
「だよな!」
「なんか年を重ねるごとに甘くなってくよねえ、悠んちのスイカ」


今すぐオレんちに集合!

突然のメールに、まずは首を傾げた。悠からメールなんて珍しい。そう思いながら、素直にお隣の田島家へ向かう。そこで私を待っていたのは、大きなスイカと目を輝かせる悠だった。
そうだもうそんな季節だ、と額の汗を拭う。毎年夏の恒例行事、スイカ割り。場所は悠んちの庭。いつから始まったのかは、忘れてしまったけど。

ブルーシートの上で、綺麗に割れたスイカ。ちなみに割ったのは悠だ。太陽の光を浴びてキラキラ輝く赤色が眩しい。
隣で悠が器用に種を飛ばす。小さい頃は、どうしても種を悠よりも遠くに飛ばせなくて、悔しくて泣いたりしたなあ。スイカを割る時に、イタズラ好きの悠に変な方向に誘導されて、塀に激突したりとか。


「クラスの奴にさー」
「うん」
「毎年庭でスイカ割りするっつったらすげーびっくりされた」
「へえ」
「別に普通だよなー?」
「ううーん、普通ではないかも」


とりあえず、私の回りでは毎年庭でスイカ割りをするという話は聞かない。ていうか私も、悠とお隣じゃなければスイカ割りをやる機会なんてなかったかもしれない。


「みんなやらねーんだなー」
「でも楽しいよね、スイカ割り」
「だよな!オレ将来子どもできたら絶対一緒にやるし!」
「いいんじゃない?」
「お前もだよ」
「え?」
「あったりめーだろー、家族揃ってやんなきゃつまんねーもん」


スイカが喉に詰まりそうになった。げほげほと咳き込む私の背中を、だいじょぶかーと言いながらさすってくれる悠。
あんな爆弾発言をしたくせにいつもと何も変わらない表情で、なんか、なんていうか、悔しい。隣の悠をチラリと見た。


「あれ、嫌?子どもと一緒にスイカ割り」
「い、嫌じゃないけど」
「あとアレな!庭でビニールプール!」


ビニールプールで遊んで、スイカ割りしてそれ食べて、暗くなったら花火をする。子どもと、悠と、私で。
悠の笑顔の向こうにそんな光景が見えた気がした。不思議なくらい鮮明に。


「オレ子どもはいっぱい欲しいから、がんばろーな!」
「…が、がんばろーなって…」


恥ずかしいやつ。俯いて、スイカにかじりつく。
冷たいスイカも、私の熱い顔を冷やしてはくれなかった。



8.28
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