今ひまだったら外に出てきて。

それだけ書かれたメールを見て、反射的にベッドから起き上がる。練習で疲れてんのに、今すぐ寝たいのに。あいつからの連絡はそれを超えてくる。上着を掴んで部屋を出た。
階段を下りながら、メールの送り主のことを考える。そいつは朝から変だった。廊下でばったり会ってはニヤリと笑い、購買で会ってはニヤリと笑い、校門で会ってはニヤリと笑い、そしてそそくさと立ち去り。変な女だけど、一応彼女だ。オレの。

外に出て、辺りを見回す。電信柱の陰からヒョコッと顔を出して笑う彼女の姿を見て、オレは何だか体の力が一気に抜けてしまった。彼女の頭には赤いサンタの帽子。気が早いっつーの。


「何やってんだよ」
「今日めでたく誕生日を迎えた隆也くんにサンタさんがプレゼントを届けにきました」
「クリスマスにはまだはえーぞ」
「いやあ待ちきれなくて」


子どもかよ。ため息をついて、鞄をごそごそと漁る彼女を見る。これまた気が早いクリスマスっぽくラッピングをされた袋を取り出して、また笑った。


「はいっおめでとう」
「…どーも」
「あ、今開けないでね帰ってから開けてね」
「なんで」
「恥ずかしいもん、目の前で開けられたら」


この寒い中こんなとこまで来てしかもサンタの帽子なんか被っといて、何が恥ずかしいんだか。やっぱり変な奴だと再確認する。
でもそういう奴だからこそ、好きなのかもしれない。結局は。だから、もう少し一緒にいたいとか思ってしまうのかもしれない。


「あー、なんかさ」
「うん?」
「今軽く体動かしてーんだよな」
「この寒いのに」
「…そのへんちょっと散歩でもするか?」


目がきらりと輝いた。気がした。満面の笑顔をイエスと受け取って、さっさと行こうぜ、とか言いながら特に意味もなく月を見上げる。


「手つないでいい?」
「やだ」
「なんでよ!」
「うそ。いーよ」


そう言って冷えた手を握ると、隣で彼女は目を丸くする。その手を引いて音のない夜道を歩き始めた。


「…なんか隆也、いつもより優しくない?」


気のせいだろ、と返しつつも、その理由がオレにはわかってた。いま隣にいるこいつが、いつだってオレを優しい気持ちにさせる。


「隆也」
「ん」
「生まれてきてくれて、ありがとう」


ほらまた、こうやって。



12.11

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