Clap



ミニストーリー 〜正面の君〜



私の生活に最近新たに追加された事がある。自宅である神社の鳥居をくぐり石段を降りた所、そこで待つその小さな背中に声をかける事。


「おはよう、五条くん」
「……………」


ひょんなきっかけで最近知り合って、なぜだか登下校を供にしている彼は五条悟くん。たまごっちの事もあって少し仲良くなれたかな、と思っていたのだけれど、このところの彼は毎朝不機嫌な顔をしている。そして未だに彼からの挨拶は返ってきたためしがない。
いつもなら気にせずそのまま学校へ向かうのだけれど、何となく今日はそんな彼が気になって。
私が何かしただろうか?嫌なら迎えに来なければいいのではないか?そんな事を思い沈黙したままの彼を見詰めていると、眉間の皺が深くなった。

「…ぉ、…」
「え??」

五条くんは一度視線を下げるともごもごと小さな声で何かを言おうとしているようで、何故かどんどん眉間の皺が深くなっている。聞き取れないその声に耳を澄ましていた私と、睨みつけるような彼の鋭い視線が交わったときだった。


「…っから、おはようって、言ってんだろ!!!!」


思いの外大きな声に瞠目し、何も言わない私を見る彼の頬はほんのり色づいていて。『言ってやった』と『言ってしまった』この2つの感情が混ざったような何とも言えない顔をしていて。つり上がった眉が徐々に下がって山の形を描き、キレイすぎる瞳が不安気に揺れている。


「…んふっ、ふはっ、あははっ!!!!」
「なっ、笑うな!!」
「あは…っ、、ごめん…ふふっ!!」


これが笑わずにいられるか。だって彼は『おはよう』が言いたくて、でも言えなくて、このところずっと不機嫌な顔をしていたんだろうから。なんて可愛い理由だろう。真正面に立つ彼の頬はまだ赤い。またも眉はつり上がり、今度は口先まで尖っている。
でも、たったその一言のためにとっても頑張ったんだなって。そう思うと愛おしくて。いつの間にか私の右手は彼の柔らかな髪にふれていた。


また怒ってしまうかも、そう思って恐る恐る手をどけた。でもそれは杞憂だったみたい。だってそこにあるのはとびっきりの笑顔だったから。




「おはよう、五条くん」





(拍手ありがとうございました\(^o^)/小学生五条が挨拶にこなれるまでの話)





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