vomit | ナノ




兵助が吐くことに対して慣れて来てしまっている自分がいた(常識的にあり得ない、けど、)人間の慣れ、というものは怖い。兵助はよく吐く。酷いときは毎日吐く。毎日毎日吐かれれば、慣れたりもする。だから今日はいつもと違った。今夜も兵助は吐いた。苦しそうだったから、おれは兵助の背中をさすってやった。兵助は、目を見開いて口の端から消化しきれなかったものを垂れ流しながらおれをみた。やっぱりきたない。ちょっと顔をしかめる。でも兵助はおれを見ていた。不思議そうに兵助がおれを見てくるのに腹がたったから、兵助の背中に置いていた手を離して、いつもみたいに言う。
「きたないから、早く片付けてよ。兵助、くさいよ」
兵助はやっぱり笑うのだ、へらへら。でも今日はいつもと違った。
「ありがとう、勘ちゃん」
なんでお礼なんか言ってんだよ、兵助のばーか。