vomit | ナノ



久々知兵助っていう人間が居た。成績優秀、礼儀も正しくて真面目で、人間として完璧なんじゃないかと思われるようなやつがいた。しかし、人間なんて生き物には必ず欠けた部分がある。その部分が見えようが見えまいが、確かにその欠けた部分、というのは存在しているわけで、久々知兵助も例外ではなかった。久々知兵助には、嘔吐癖があった。豆腐を食べて、食べて、食べて、そして食べた豆腐を吐き戻すのだ。あいつと同じ部屋で過ごすおれからしてみれば、堪ったものじゃない。なのに久々知兵助はへらへらと笑うのだ。おれは、そんな久々知兵助という人間が、だいきらいだった。