旧05
突然やってきた訪問者たちは、扉の鍵を持っていた




師匠は短気なので、早めに出ないとまた大変な事になるのは目に見えていた。
だけど急ぎすぎるのも事故の元だと自分に言い聞かせ、僕はゆっくり、一応お決まりの台詞を口にしつつ扉を開けた。


「どちら様で・・・」
「「「あ・・・」」」


そこまでいって、僕は固まった。
相手の姿を認識した途端僕の思考は一瞬停止してしまい、動くことが出来なかった。
相手――何か見慣れた、けれどここにいるはずのない三人組(見間違いのはずだ)――もなにか驚いた表情をしていたが、それを確認する事は出来なかった。
だって次の瞬間には扉を思いっきり閉めたのだから。
力の限り。
なぜかって?
だって、だってそれは・・・・・・




六つの花
File.005





力いっぱい閉めたので、辺りにはバンッと激しい音が響いた。
風圧で後ろにいた二人の髪が揺れるほどだったから、相当な勢いがついていたことが分かった。


「・・・・・・ちょ、#sora2#・・・?」
「#sora2#・・・?え、師匠達じゃなかったの?・・・おーい、#sora2#さん?」
「・・・・・・」


固まったまま反応を示さない僕にびっくりして二人がわたわたしている気がする。
話し掛けられているのは分かるけれど、右から左へ音が流れていき内容までは頭に入ってこなかった。

さっき扉の向こう側にいた人物があまりにも信じられない僕は、もう一度、もう一度だけ恐る恐る少しだけ開けてそこにいる『人物達』を見た。


「・・・・・・・・・」
「「「・・・・・・・・・」」」


相手も無言で、そしてやっぱり僕も無言でもう一度扉をしっかりと閉めなおした。
自分の目が未だに信じられない。

だって。
だって!!

超絶美形の!

金髪金眼の三つ編みアンテナ少年(ミュンヘン仕様十八歳)と
黒髪黒眼の雨の日はノーサンキュー男(推定年齢三十路前後)
それプラス黒髪ロングのえげつなさで有名な露出狂様の、
かのお三方が!


そこの、僕らの玄関の前に佇んでいらっしゃって、立ってて、たっ・・・え、立ってて・・・?!(大混乱)

え、何、見間違い?
いやだなあまだ老眼でもないしましてや近眼でもないピッチピチ(死語)なうら若い小娘ですって☆
豆と無能と海老がいくら好きだからって幻覚見るほど堕ちてないはずですよ奥さんほんとほんと、本当だって・・・・・・!


「ねえ、どうしたの#sora2#?」
「・・・・・・まっ・・・」
「「ま?」」

「豆と無能と海老コスした人、が!家の外、家の外にっ家の外に・・・!!」

「は?!なにいっ・・・」


混乱しすぎて突然叫んだ僕に#kana2#ちゃんが何か言い掛けていたけど、それは突然開いた扉の音によってかき消された。
そして、扉を開いた人物は開口一番僕に勝るも劣らない程の声おもいっきり叫んだのだった。


「だぁれが豆粒どチビかぁぁああ!!!!!」


・・・・・・そんな、漫画の中でしか言わないような、お馴染みの台詞を。

思考が停止している僕の脳に、聞き慣れたあの麗しの朴さんボイスにそっくりな声が目の前の扉――僕が思い切り閉めた扉をこれまた凄い勢いで開かれた――から聞こえて響いたかと思うと、額に何かがぶち当たって急に視界が変わった。
気が付いたときには足は地面を踏んでおらず、奇妙な浮遊感の後、僕の背中と頭には激痛が走った。


「いっ・・・うおあ?!」
「ひぐっ――ぃだあ!!」


全てが突然過ぎて受け身をとる事が出来ず(ついでにあまりの痛みに変な声が出た)、ガツンといい音と共に、一瞬視界が白く光った。
その衝撃に脳が揺れたような感覚に襲われる。
酷く痛む後頭部と背骨に、自分が後ろ向きに倒れたのだということを辛うじて理解した。

ふいに、顔に何かが降りかかってきた。
それがとてもくすぐったくてそっと目を開けると、日の光を反射させてきらきらと光る綺麗な金色の物が、僕の視界いっぱいに広がっていた。
頭を打った余韻も手伝い、僕はしばらくの間一体何が起きたのか理解できず目を瞬かせた。
流石に混乱して、普段滅多に使わない頭をこの時ばかりはフル回転させて現状整理を試みた。


「(ええ、と・・・?まず、玄関を開けると鋼の三人組コスプレーヤーさんが並んでいらっしゃって・・・一旦閉めて、また開けてもいたから、閉めて。それから・・・・・・僕が「豆」と叫んだら朴さんボイスが、聞こえて扉が開いたん、だよね・・・で、扉を開けてきた人が勢いよく玄関に飛び込んできて、頭突きをされて、勢いついてたからそのまま、倒れ・・・て?・・・・・・ん?倒れ・・・・え、え?!)」


整理が終わった瞬間、僕の顔はボッと音がでそうな勢いで赤くなった。

――そう、今現在僕は、超絶美形のエドコスプレーヤーさん(ここ重要!)に・・・押し倒されているのだ!


そんなことされたことがあるはずもない僕は(あったら逆にびっくりするけど)パニックに陥り、自分でも分かるほどに体中の体温が上昇していった。
体の芯からふつふつと熱くなり、視線を一点に固定したまま身体も硬直して動くことが出来ない。
驚いたのは相手も同じ様で、同様に固まっていたかと思うとはっと息をのむ音が聞こえてきた。
ようやく我に返ると、その人は慌てて僕の上から飛び退いた。


「わっわり!」


そういうが早いかばっと起き上がって離れたそのエドコスさんの顔も、トマトのように真っ赤になっていた。


「え、いや、その・・・はい・・・・・・」


そんな彼を目の前に、僕は困惑しきって何と言っていいのか分からず、とても曖昧な返事をしてしまった。
熱が集まって熱くなった顔を隠すように俯くと、両手で頬をはさんで煩く鳴る鼓動をどうにかして静めようと深呼吸を繰り返した。
それから改めて相手の顔を確認した。
見上げてみた彼の容姿は、本物なんじゃないかというほどそっくりで、綺麗だった。
しかもおまけに映画版の十八歳ミュンヘン仕様のエド。
格好よすぎて鼻血が出そう・・・って違うよ自分!(独りツッコミ)
感動しつつ吃驚しすぎて言葉もでてこない僕に、彼はおずおずと話しかけてきた。


「あー、えっと・・・お前、#sora#・・・だよな?」



――・・・・・・な ん で す っ て ?
今、この人はなんていった?
え、#sora2#っていいました?!
な、なんで僕の名前知ってるのこの人ー?!


さっきまでの胸の高鳴りはどこへやら。
その滑らかな唇から発せられた衝撃の言葉に、僕は思わず叫んでいた。
そう、まったく見当違いな言葉を。


「ま、まままさか、ストーカーさん?!」
「ば――っ違う!!俺はただお前らに用があって・・・」
「用って・・・・・・まさか夜這い?!」
「ちっがぁーう!!」


だあぁ!と叫びながら頭をかきむしる彼を見ていて、本気でエドみたいにオーバーな人だなぁ、と暢気なことを思っていた。
そしてようやく名前を聞いていない、ということに気が付き、小首を傾げて尋ねてみた。


「ところで・・・どちら様、ですか?」


普通なら一番初めに聞くべき事なんだろうけど、色々な事がいっぺんに起こりすぎて聞きそびれていたのだ。


「・・・お前、マイペース過ぎだろ・・・・・・てか、名前なんて知ってるんじゃ・・・ああ、そっか」


何かを聞いた気がしたけれど、それはスルーの方向に。
一人で自己完結したらしい彼はわりいわりい、と苦笑しながら彼は頬をぽりぽりとかいた。
それから彼は、僕とをしっかり視線をあわせて名乗った。
確かに名乗ったのだけど、僕は、自分の耳を疑った。


「俺の名前はエドワード。エドワード・エルリックだ」


そう、確かにエドワードと、名乗ったのだ。
この人は。


頭が可笑しくなってしまったんだろうかなどと、とても失礼な事を思ってしまった。
だが、普通に考えて可笑しいと思わない人は居ないだろう。
何故って、コスプレするだけならまだしもここまでキャラになりきるなんて変を通り越してはっきりいって恐ろしい。


「な、何の冗談ですか?その・・・・・・頭大丈夫?」


最後の方は小声で言ったつもりだったが、相手にはしっかりと聞こえていたようで。
笑っていた彼の口元が微かにひきつり、うっすらと青筋らしきものがみえた気がした。


「名前答えただけで馬鹿扱いとはいい度胸じゃねえか・・・」
「あ、いや、あの、えっと、その・・・!」


どうやら、逆鱗に触れてしまったらしい。
どこかでそれもそうかと納得しながらも、僕は混乱した頭で必死に言い訳を考えつつ、それ以上脳が働いてくれなかった。

そんな目の前の嵐のような出来事に、#kana2#ちゃん、#uta2#ちゃんの二人はただただ固まっていた。
はっと息を呑む気配が背後からし、搾り出すような、よく耳を済ませないと聞こえないような、そんな蚊の鳴くようなか細い声が聞こえた。


「・・・・・・ハガレン、の・・・エド?」
「・・・・ありえない、ありえないわ、ありえないったらありえない・・・――」


二人が呆然としているのが顔を見なくても分かった。
伊達に三つ子を十七年やってないのだ、それぐらいは分かる。
数日前もそうだったが、流石というべきか、#uta2#ちゃんはこんな理解不能の事態だというのに立ち直れたようだ。
#kana2#ちゃんは、まあ、思考が追いついていないのだろう。
というか、僕も含めて三人とも思考が追いついていなくて身じろぎ一つ出来ずにいた。
しかし。


「おチビさん、話ややこしくなるし混乱してるんだから余計な刺激与えないでよ」
「鋼のも、いい加減感情だけで行動するのはやめたまえ」


エドワードと名乗った彼の背後から聞こえてきたその声に。


「「「う・・・っそおおおおーーー!!??」」」


僕らは、山中に響くほどの大声で叫んだのだった――






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(07/12/10頃 掲載 09/1/1)
すみません、書いて一年ぐらい放置してましたorz
いえ、ただどこで切れば良いのか分からなくてうだうだ書いてたら凄いことになってですね…!;←
とりあえず。
4年目にしてようやくキャラでました。
人多くて何が何だか…
この後の展開どうしよう(*´∇`)←


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