#uta2#ちゃんが恐る恐る開けた扉の向こう、道場の奥の掛け軸が飾られている前に、師匠は坐禅を組んでいた。
師匠が坐禅を組むときは決まって僕らに重大な何かを言うときだけれど・・・今度は一体何なのだろう・・・・・・
冷や汗を流しつつも、僕らは静かに道場へと足を踏み入れた。
「「「失礼します」」」
「・・・きたか。とりあえず俺の前に座れ」
すうっと目を開いて僕らの顔ををみた師匠に言われ、内心おっかなびっくりしながらもさっと言われたとおりに師匠から向かって左から#kana2#ちゃん、#uta2#ちゃん、僕の順に座った。
「今日はお前ら三人に渡す物がある。本当はそれだけだから直ぐ済んだんだが・・・渡す相手が遅刻しやがったせいでとんだ時間をくっちまった・・・」
「でもたった十秒・・・」
「なんか文句あるか#sora2#?」
「な、なんでもございませんです!」
思わず口をついて出た本音(めちゃくちゃ小声)を地獄耳の師匠にちゃっかり聞かれていて、僕は顔を青くして何度も顔を横に振って否定した。
口調が可笑しくなった気もするけど、この際気にしない。
なんでこの人はこんなに耳がいいんだろうか・・・
「まあいい。・・・それで、お前達に渡すものだが・・・・・・」
師匠はそこで一旦言葉を切り、おもむろに懐から何か白い封筒のような物を取り出した。
そして僕らの前にすっと置き、言葉を続けた。
「・・・これだ。開けてみろ」
目の前に差し出された白い封筒は、本当に、何の変哲もない物だった。
・・・外見だけは。
六つの花
File.003
File.003
「「「・・・・・・」」」
僕らは差し出されたその白い封筒をどうするか、無言で顔を見合わせた。
年期が入っているらしいそれは、少し端が黄ばんでいて、中に何か紙以外の物が入っているらしく一部小さく膨らんでいた。
嫌なものが入ってそうでとっても開けたくはないけれど、師匠が開けろと言っているのだから短気な師匠を待たせるわけにもいかない。
――どうする?
――やっぱりここは一番近い#uta2#が開けるべきね。
――って結局うち?!うぅ・・・分かったわよー・・・・・・
瞬時にアイコンタクトをとり、上から僕、#kana2#ちゃん、#uta2#ちゃんという感じで意思疎通をとった僕らは、またも貧乏くじを引いてしまった(というか引かせた)#uta2#ちゃんに心の中でエールを送った。
#uta2#ちゃんは恐る恐るとその白い封筒を手に取ると、封を切りその切り口に手を添えるとその封筒を逆さにした。
シャララッと金属のような物が紙の上を滑る音と共に出てきた物は。
「・・・・・・え・・・ネックレス?」
掌に落ちて来たものを見て、#uta2#ちゃんは素っ頓狂な声を出した。
それもそうだろう。
どんな不吉な物が入っているかと構えていたのに、師匠からは想像も付かない・・・こんな可愛いらしいものが入っていたんだから。(言ったら確実に殺されるけど)
出てきたネックレスは三つあり、全部同じデザインだった。
直径5ミリ程の黒くて丸い水晶の様な宝石が中心に一つ、それを固定している銀細工の装飾のみといういたってシンプルな物だったけれど、見ているうちに懐かしいような、暖かい印象を受けた。
何て言うんだろう・・・お母さん、っていうのかな、そんな懐かしさや優しさ、暖かさを感じたんだ。
でも僕はお母さんなんて覚えてないのに・・・何故だろう?
しばらくそのネックレスに僕らは見取れていたけど、#uta2#ちゃんが思い出したかのように三つあったうちの二つを僕と#kana2#ちゃんに手渡した。
「あ、えっと、はい#sora2#!こっちはええと、#kana2#ね」
「へ?あ、ありがとー#uta2#ちゃん」
「え、ええ・・・・・・」
皆なんだか歯切れが悪いけど、何故か今は誰もその事について触れなかった。
他の二人も変な心境になってるのかなー・・・なんて考えてると、今まで黙っていた師匠がゆっくりと口を開いた。
「・・・それは、お前達三人が十七歳になる時に渡してくれ、と雅代(マサヨ)から頼まれていたものだ」
「雅代・・・おばあちゃんが、ですか?」
「ああ」
#kana2#ちゃんが驚いた表情で師匠に尋ねた。
そういう僕も、隣にいる#uta2#ちゃんも驚いてるけど。
雅代おばあちゃんっていうのは僕ら三つ子の育ての親だった人のことだ。
みなしごの僕らを女手一つで育ててくれて、色々な事を教えてくれたりした大好きな人だった。
八年前に急に病気で他界してしまって今はもう居ないんだけど・・・だからそのおばあちゃんの名前が出てきてびっくりしたのだ。
「雅代が逝く前、見舞いに行ったときに預かった。・・・・・・三人の母親から託されたもの、らしい」
言われた瞬間、僕は何を言われたか全く分からなかった。
あまりにも突拍子がなさ過ぎたし、耳慣れない単語を師匠の口から出てきたのが信じられなかったんだ。
しばらくして#kana2#ちゃんがぽつりと呟き、それに連なるように僕、#uta2#ちゃんも言葉を発した。
「私たち・・・」
「三人の・・・」
「はは、おや・・・?!」
「そうだ。それとその封筒の中には手紙も入っているそうだ」
「あ、ほんとだ・・・」
師匠に言われてまだ中身があったことに気付くと、#uta2#ちゃんは中身をだして僕たちにも見えるように広げた。
古くなった紙に書かれていた物は・・・
流暢な、それも見事な筆記体で書かれた「英文」だった。
「・・・ごめん、僕読めないよ・・・・・・」
「大丈夫・・・ウチも読めないから」
「二人とも・・・これくらい読めなくてどうするのよ・・・・・・」
早々に読む事を諦めた僕と#uta2#ちゃんに、#kana2#ちゃんはため息をついてその手紙に目をやった。
でも、まさか自分の母親が外国人だったなんて思わなかった。
僕ら皆黒目黒髪だから当然両親も日本人で日本に住んでたんだとばかり思っていたのだから・・・
そんなことを思っている内に、#kana2#ちゃんはどうやら手紙を解読し終わったみたいだった。
だけど、何か様子がおかしい。
これ以上ないという程目を見開き、開いた口が塞がらないといったような驚愕の表情になっていた。
今までこんなに#kana2#ちゃんが驚いている顔なんて見たことがない。
「#kana2#・・・ちゃん?」
「ど、どうしたの?なんて書いてあったの・・・?」
心配になって声を掛けると、困惑の色を隠せていない瞳をこちらに向けた。
そしてその震える唇で、手紙の内容を話し出した。
「・・・・・・『私の可愛い娘、#kana#、#uta#、#sora#へ。
これを読んでいるということは、貴女達はちゃんと立派に・・・育ったのね。
できれば、私の手でちゃんと育てたかったわ・・・
でも、貴女達を守るにはこうするしか方法がなかったの。
非力な私をどうか許して下さい。
これから、とても重要な事を言います。
とても信じられないだろうけど、なるべく冷静に読んでほしいわ。
――貴女達のいた場所・・・生まれた世界は、今貴女達が居る世界とは別の世界なの。
馬鹿らしいと思うでしょう。
でもこれは嘘ではない、紛れも無い真実。
あなたたちの故郷は、
「アメストリス」という国。
緑が綺麗で、美しい、国よ・・・・・・
これを書いている今も、奴らはここに近づいて来ているでしょう。
だから、あなたたちだけでも、無事に逃がしてあげたい。
お願い、きっと生き抜いて、この手紙を読んで・・・
私はあなたたちと一緒にはいけないけれど、必ずいい子達に成長すると・・・信じてます。
あなたたちに、お守りとして、同封したネックレスを授けます。
けして・・・絶対に、肌身離さず持ち、無くさないようにしなさい。
もう時間がない・・・・・・
ああ、愛しい子達!
さようなら、ごめんなさい、愛しているわ・・・!
私の手で育ててあげられなくてごめんなさい。
平和で、平和で幸せな暮らしを、あなたたちが過ごせますように―――』・・・・・・」
・・・・・・驚きというのを通り越して・・・何も、言えなかった。
僕らはそのまま思考を停止して固まってしまった。
だって・・・アメストリス国って。
あの、あの鋼の錬金術師の世界、じゃないですか・・・?!
今日初めて知った事実。
どうやら僕らは、アメストリス人だったらしいです。(ちょっとマジですか)
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うわっちゃあー…結構後に出そうと思ってたネタを成り行きで出しちゃいました…
実は主人公達アメストリス人だったんですよ。
うわっ当初の予定が…っ色々練ってたりしたのが全てぱあだ…!!(馬鹿した…!!)
てか相変わらずただの名前変換小説に…orz
たぶん後2話ぐらいでトリップするかと…!!;
2007/4/9 6/9一部修正