旧02
「師匠、あなたは天性のドS野郎ですね」口が裂けてもいえないけど・・・




「し、死ぬ・・・!」
「ししょ・・・も、勘弁・・・・・・っ!」
「何言ってるんだ?約束の時間に間に合わなかったお前等が悪いんだぜ?あぁ?」
「まあまあ、あなた。もうそろそろ許してあげてもいいんじゃないかしら?もう二時間もたつわよ」


今、僕らの前には二人の人物が居る。
一人は僕たちの目の前に悠然と立ち、素敵などす黒いオーラを背後から放出し、尚且つ極上の笑顔を向けてくれているホスト系の顔立ちで、袴姿が似合っている格好いいお兄さん。
そしてもう一人はというと、そのお兄さんを横から宥めている(尊敬します)ほわほわした着物美人なお姉さん。
そして泣き叫んでいる僕らはというと。

目の前のホスト兄さん――師匠によってお仕置きという名の拷問を受けていた。

内容?
聞きたいの?

本 当 に 聞いても後悔しないかい?

・・・とりあえず、これだけは言っておく。


もう、このまま死んだ方がましだ・・・!!(いっそ殺して楽にして!)




六つの花
File.002





話は約二時間前に遡る。
僕らは山の中にある我が家から死ぬ気で駆けてき(途中人を何人かはねた)、一般人だったら徒歩で一時間はかかるであろう道のりを僕たちはたった二分弱で走りきった。
人間やればできるんだとしみじみと思ったよ・・・
それと同時にこの人間離れした運動能力を半ば無理矢理つけさせた人物を思い描いて冷や汗が浮かんだんだけどね。
てかよくあんな獣道全力疾走出来たよね自分に拍手だよてか僕らの頑張りをギネスに載せて下さいって感じだよマジ。(ノンブレス)
何はともあれ、僕らはなんとか師匠たちの道場に到着した。

そこまではよかった。
そこまではよかったんだ。

道場の門を足を休めることなく走ってくぐり抜け、扉を勢いよく開いた。


瞬 間


あり得ないほど黒い、冷気を含んだオーラが僕らの身体に直撃し。
僕たちは一斉に硬直した。
その半端ない殺気に当てられて脳がくらくらする。
それでも何とか正気を保つことに成功した僕は、おそるおそる、道場に一歩踏みこんだ。

その時だった。


ヒュッ

ガガッ!


変な音と共に、僕の頬を。
何か鋭くて冷たくて短い物が、掠めていきました。


さっと体中の血の気が引いた。
鋭い痛みが襲ったかと思うと、そこからつうっとなま暖かい液体が出てき、頬を伝って床へと流れ落ちていく。
一瞬にして僕の動きと思考は綺麗に止まってしまった。


――ガガッて・・・っ!
一体、一体何飛んできたの?!
恐ろしくって後ろ振り向けま・せ・ん!(何)
というかどんだけ力こ も っ て る ん だ !!


「お前等」


突然、辺りを包んでいた静寂を引き裂いて声が響いた。
その声を聞き僕の肩は大きく揺れた。
普段はアルトとテナーの中間のような美声なのに、今はその面影さえ感じなかった。
なにせ、その声は地の底をも震わせ、この世のものとは思えないほど恐ろしいものだったのだから・・・・・・
奥の方で、誰かが立つ気配がした。
言わずもがな、それは見た目超美形のホスト兄さん、実年齢軽く50は越えちゃっている師匠だった。(昔詐欺だ、若作りだとかいったら殺されかけた)
師匠は満面の笑みをその顔に張り付けたまま、ゆっくりと僕らの方へ近づいてきた。


「俺が時間にルーズな奴は死ぬほど嫌いって、お前等忘れたわけじゃねぇよな?んん?何とか言 え よ」


――恐ろしすぎて何もいえませんから!

内心叫びながら、頬がひきつり普段出ないところから汗がだくだく流れる。
後ろにいる二人も恐怖で動けないようで、ぴくりとも気配が動かない。
こういうオーラに一番弱い#uta2#ちゃんなんて、生命反応自体が薄い。
すごく危険な状態だ。
そうして何も言えずにぴくりとも動かない僕たちに向かって、師匠は言葉を続ける。


「ほー無視か。つーか十秒も遅刻するたあ良い度胸してんじゃねえか。あ゛?」


たったの十秒じゃないですか!と叫べない自分たちが悲しい。
でも師匠との約束を忘れていた自分たちも悪いので、言い返すことも出来ず何も言えないままアホみたいに突っ立っていることしか出来なかった。


「約束は約束だ。守らなかったお前等が悪い。てなわけで“お仕置きスペシャルバージョンレベル3”・・・・・・実行な?」


そして、僕らは旅だったのだった。(三途の川が見えました)

こうしていつも以上に切れている師匠によって、二時間近く拷問に近いものを受けたのだった。
その間、何回死んだおばあちゃんを見たことか・・・・・・

そして現在に至るわけでして。
師匠は相変わらす笑顔で恐ろしい。
師匠の隣に居るほわほわ、というよりぽわぽわした黒髪美人さん――師匠の奥さんで僕らの第二の師匠である師範代の風夏(ふうか)さんは、「まあまああなた」と師匠を宥めている。

何で師範代って呼んでるかって言うと、二人とも師匠って呼んでた頃に師匠が「混乱してわけわかんねえから俺を師匠、風夏のことは師範代と呼べ!」って無理やり決めたんだ。
因みに師匠の名前は青海(おうみ)だったり。
今はまあ、そのことは置いておくとして。

現在僕は“お仕置きスペシャルバージョンレベル3”を受けて地面に横たわっていた。
此処まで精神的に疲れたのは初めてかもしれない。
いや、1、2も凄かったんだけど今回のはそれ以上で・・・!!(遠い目)
近くに居る#kana2#ちゃんと#uta2#ちゃんを盗み見てみると、#uta2#ちゃんは白目をむいて「おばあちゃぁ〜ん、今そっちに逝くよぉ」とか言っちゃっている。

真面目に危ない。

#kana2#ちゃんは#kana2#ちゃんで、僕と同様意識は保っているけど目つきが滅茶苦茶怖い。
なんか口からは奇怪な声まで漏れてる。


「う、ふふ、うふふふふふははははははあーっはっは!!」


・・・もう、怖いを通り越していっそ不気味だ。

大方、精神やられすぎてだんだんと怒りに変換されて、そのやり場のなくなった怒りがああして声に出てるんだと思う。
そういう自分も何か口から音が漏れてる気がするんだけどね。

結構なんか・・・こう、きちゃってるんだよね、うん。
こうやって冷静に話してるけど、実際色々ずたずたにされちゃってて色々とやばい状態だったりする。
それでも何とかミジンコ(?)ほどの理性は残っているんだけれど・・・
でも、もう・・・・・・

もう正気が保てる自信がないよ・・・!!

その時、何故か頭の中で、エドと浜辺で追いかけっこしているシーンが流れた。(謎だ)

何かもう現実逃避しすぎて脳内が可笑しな事になり始めている。
師範代の救いの手が伸びたのは、そんな時だった。


「あなた、ご飯の支度が出来たわよ。皆で仲良く食べましょう?」
「いやまだこいつ等いじめ・・・叱り足りねぇ」
「そうかりかりしちゃ駄目よ。それにほら、三人とも十分に反省しているようだし」


ねぇ?と微笑みかけてきた師範代が、聖母マリアのように神々しく見えたのは言うまでも無い。(師匠が何か言った気がしたけど気にしない)


「は、い、反省、してますっ遅れてすみません、でし、た!」
「だから、も、勘弁してくださ・・・!」
「うふふふふふふふ・・・・・・」


何か一人だけ違う世界へ旅立っちゃってるけどこの際無視!(酷っ)
今助けてもらわなきゃこの地獄がいつまで続くか分かったものじゃない。
だからはっきり言って#uta2#ちゃんになんて構ってられない!


「ほら、#kana2#ちゃんも#uta2#ちゃんも#sora2#ちゃんも、みーんなこう言っている事だし、許してあげましょうよ」
「#uta2#は俺の神経逆撫でしたいようなんだが」
「それはあなたが虐め過ぎたからじゃないかしら?正気に戻ったら絶対謝るわよ。だって、三人とも昔から素直でいい子だもの」
「・・・・・・そうだな、そろそろ俺も疲れてきたし終わるか。お前ら!次遅れたら命は無いと思え。いいな?」
「「はぃい!!!」」


そうして僕らは何とか一命を取り留めたのだった。
あ、#uta2#ちゃんはしばらくしてから正気を取り戻して、ちゃんと土下座で謝ってたよ。
正気取り戻させるために#kana2#ちゃんと僕とで頬っぺた引っぱたいたから、頬が赤く膨れて痛そうだったのはまた別の話。




◇◇◇




「「「ご馳走様でした!」」」
「それじゃあ食器を洗いましょうか。三人とも手伝ってくれる?」
「「「はーい」」」


幸せなご飯タイムが終わり、師範代と一緒に食器の後片付けを始めた。
良く思うんだけれど、僕らってほんとに息ピッタリだよな〜としみじみ思う。
周りのみんなが流石三つ子とか言うように、僕たちでも吃驚するぐらい行動という行動が揃いすぎていることがある。
言動はもちろんの事、例えば師範代に


「今年は何所に遊びに行きたい?」


と一人一人ばらばらの場所で、誰も居ないときに聞かれたのにもかかわらず


「今年行きたい所ですか?そうですねぇ・・・ここら辺って山ばっかりで殺風景だから、海に行って思いっきり羽目外して遊びたいです!」


と一言一句違わず、考えるポーズも一緒でびっくりしちゃったわ、と師範代が笑いながら話してくれたけど当の本人達が一番吃驚していたり。
いやー、あの時は本当に驚いたなぁ・・・

ぼんやりとそんな事を考えつつ女4人で楽しく喋りながら食器を洗っていた。
師匠は先に道場の方に戻ってしまっているのでここには居ない。
準備をして待っとくとか言っていたけれど・・・今度は一体何があるんだろう・・・・・・(遠い目)
食器を洗い終えてしまい少々憂鬱になっていると、師範代が手を拭き終えてにこやかにいった。


「それじゃあ、こわーいお師匠さんの所へ行きましょうか」
「「「・・・はい」」」


内心いきたくなくって仕方がなかったけれど、師範代のその笑顔に反論も出来ない。
ある意味師匠より師範代の方が強いんだよね・・・
唯一師匠を止めることが出来る人だし。


「そう言えば今日って師匠が呼び出したのよね?何の用かしら」


#kana2#ちゃんが唐突にそんな事を言った。
そういわれれば、そうだったな。
稽古は何時も午後からなのに、今日は珍しく早めに来いって呼び出しが掛かったんだ。
時間に遅れたせいでえらい目にあったのだけど・・・


「そう言えばそうだよね、何?また特訓メニューレベルアップとか?」
「うわぁ、ありえそうでそうでやだなぁ」
「それともあれかしら、#uta2#に仕掛けたトラップにごん太(師匠の愛犬)が引っかかったのがばれた――」
「ちょっと待て#kana2#。今なんていった?うちに仕掛けたのあれ?!酷!!」
「#uta2#ちゃん・・・その、元気出して!それより早く行かないと師匠にどやされちゃうよ?」
「#sora2#・・・私の味方は#sora2#だけだわ・・・っ!でもほんと早く行かないとやばいかもね。じゃあダッシュでゴー!!」
「ちょ、待ちなさいよ#uta2#!廊下は走っちゃ駄目よ!」
「#kana2#ちゃん、別にいいわよ。それより、走らなくてもいいから#kana2#ちゃんも#sora2#ちゃんも早く夫の所に行ってあげてね」
「あ、はーい。じゃあ僕、先に行っておきますね〜」「分かりました。私も#sora2#と一緒に先に行きますね。師範代も早く来てくださいね!」


そういって僕と#kana2#ちゃんは小走りで駆けていった。
#uta2#ちゃんとも途中であったので、結局3人一緒に道場に向かった。
師匠の呼び出し理由についてあれこれ話し合いながら歩いていると、いつの間にか扉の前に到着していた。
朝の“お仕置きスペシャルバージョンレベル3”が凄かったので凄く緊張する。
緊張が漂う中、ゆっくりと先頭に居る#uta2#ちゃんが、その扉を開けたのだった――





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あはは…これ書いたの何時だろうね!
8月3日だよちょっと。
一ヶ月も何放置し腐ってんだ。(ナチュラルに変換で腐るが出たー)
とりあえず今思ったんだけどね、この話何時になったら本編にたどり着けるんだろって感じ。
10巻辺りまで書きたいとか思ってるけどまにあわねえぇ!!
…面倒臭いとか言ってる場合じゃない。
このままじゃ一生かかっても作品仕上がりそうにn(ゲフッ)
脳内にある妄想全て(?)つぎ込んだ物語だから完成させたい…っ

2006/09/17


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