「俺は、俺は悪くない・・!悪く、ねぇのに・・・っ」
「ご主人様、泣かないでくださいですの・・・」
「っ泣いてなんかぬぇよ!ウザイっつってんだろ!」
「泣いてるですの、ご主人様泣いてるですの!だってご主人様とても悲しそうな顔をしてるですの!」
「・・・っ!」


 擦り寄ってきた温もりに、言われて気付いた。
 自分でも気付いていなかったその感情に。

 誰でもいいから、慰めて欲しかった。
 肯定して欲しかった。
 いや、否定して欲しかった。
 自分がこの惨状を生み出したということを認めたくなくて、見捨てられた事実から目を逸らしたくて。

 だけどなにより――自分は、温もりが欲しかったのだと。

 共にいた同行者や幼なじみ達には見捨てられたというのに、この小さな獣だけが、自分を見捨てずに側にいて。
 獣が触れている所から、自分の中に、何か暖かいものが込み上げてきた。


「・・・お前、まじ、ウゼェ・・・」
「みゅ!?ご、ご主人様!?ごめんなさいですの、だから泣かないでくださいですの・・・!」


 堪え切れずに両手に顔を埋もれさせた時。
 何か冷たいものが一筋、自分の頬を滑り落ちた。




(あの時は、泣く暇さえ、与えられなかったんだ)




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(2008/4/27執筆 09/1/6掲載)
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