綱吉視点




 なんとなく様子がおかしいとは思ったけど、まさか貴方がそんなことを言うとは思わなくて


「・・・・・・綱吉」
「何ですか?」


「殺してもいい?」


「・・・・・・・・・はい?」




 思わず、間抜けな声を出してしまった。
 あまりにも突拍子がなくて。
 突然日常が非日常へと色を変えた事に戸惑って。


「君を愛してる。君の笑顔も、声も、温もりも、全部。愛してるから、それを全部僕の物にしたいんだ。僕が殺せば君は誰の手にも渡らないし、ずっと僕の物であり続けるでしょ?

 だから」


 殺して、いい?


 いきなり、いきなりそんなことを言われて俺は正直戸惑った。
 でもふと、ある考えに行き着いて、ああそうかと思った。
 だから、俺は貴方に殺されていいと素直に思えた。

 だって


「・・・・・・・・・いいですよ」
「・・・・・・え?」


 だって、貴方が俺を殺したなら


「いいの?」
「はい」


 貴方は俺を


「本当に?」
「いいですよ」


 忘れることなんて


「・・・・・・本当にいいんだね」
「雲雀さんに殺されるなら」


 出来ないから。


 貴方の心の中に、俺の存在が深く深く刻まれて。

 死ぬまで

 俺のことを忘れるなんて出来なくなるから。


「・・・・・・好きだよ」
「俺もです」


 貴方に俺が刻み込まれるなら。
 貴方が永遠に俺のことを忘れないのなら。


 それを考えただけで俺は幸福な気持ちになれて。
 貴方の優しいその微笑みに全てを満たされて。
 彼に殺される事を想像しただけで、ぞくりと、背中に甘い痺れが走った。

 歪んで、いる。

 今の彼と、俺は、歪んでいる、と、狂っていると、冷静な部分では理解していた。
 だけどそんな事は、今感じている幸福感の前ではほんの些細なことだった。

 彼はどんな風に殺してくれるのか。
 どんな風に、慈しんでくれるのだろうか。
 ああ、ああ!
 こんなにも幸せな事が他にあるだろうか!

 そんな狂った思考を巡らせ、今までで最高の笑みを浮かべた、瞬間。


 背中から左胸にかけて、

 鈍い鈍い衝撃が、

 走った。


 冷たい刃物が肉をえぐるのが分かる。
 かと思うと体がびくりと跳ね、刃物のある辺りが急激に熱を帯びてゆく。
 それとは反対に指先は感覚を失っていき、額が汗で滲み始めた。
 どくどくと耳に直接血液の流れが聞こえてきて、自分の命が流れていくのをはっきりと感じた。


「ぁ゛、が・・・っ!」
「つなよし・・・・・・愛してるよ・・・」


 そういって頭を撫でてくれる貴方の優しさが、本当に嬉しくてたまらなくて。
 ほんとうに、今、この瞬間、最高に幸せで。
 なんとか伝えようと口を開くけれど、途端に喉が焼けるように熱くなり。


「ひば、さ・・・っ」


 血の味が口の中に広がったかと思ったら、ごぽりと音を立てて血が溢れ出た。
 それでも俺は必死に思いを伝えたくて何度も何度も声を出そうとするけれど、そのたびに溢れてくる血と激痛に遮られてしまった。


「・・・・・・っあ・・・して・・・・・・」


 貴方を、愛しています。
 永遠に、貴方だけを愛して――


 目がだんだんと霞んでき、愛しい貴方の顔が見えなくなってきたけれど、それでも貴方を離したくなくて、ろくに力の入らない手で必死に抱きしめた。
 ろくに動くことさえ出来なくなってきたころ、貴方が、甘い甘いキスを落とす。
 それだけで、俺は、全てが満たされるような気がして。
 薄れてゆく意識の中、ぼんやりと見えた青を


 いつまでも

 いつまでも


 眺めていた





(これ、で、ずっと・・・そう、ずっと・・・)




貴方は俺を、
れることなんて





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(2007/5/12)
独占欲の強い雲雀さんがつっくんを殺しちゃったーって話を書きたくなったんです。
実際「君には赤がよく似合う」って言葉が書きたかっただけなんですけどねー(笑)
久々な上に駄文で申し訳ないです;

設定的には、
ボンゴレボスに無事就任してイタリア渡たる少し前で、ツナはもうマフィアとしての仕事とかしてるって感じです。
だからツナは人を殺したこともあるんですよ。
それで初めて殺した人は絶対に忘れられないものだって知ってるから、雲雀さんが初めて殺すのが自分だったらこれから先雲雀さんがどんな人を愛したとしても自分の存在を忘れることなんて出来ないほど深く心に自分の存在が刻まれるとわかってたんです(長っ)

…結局は雲雀さんもつっくんも独占欲強いんだよってことを書きたかったんです。
説明書かなきゃわからないよね…!

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