Re, Re, Re. 04




 今日も青い空に白い雲、いつ落ちてきても可笑しくないような石の群集(譜石帯とかいう物体だ)がプカプカと浮いている。
 それらを仰ぎ見て、ああ、いい天気だなあ、なんて思いながら頭(かぶり)を振った。

 この世界に生を受けて既に6年が経過した。
 私も今や、ライガとして1人前(いや、1匹前というのか?成獣?どうなんだろう)と認められる年になっていた。
 ――のだが、それまでが、長かった・・・・・・本っ当に、非常に長かった・・・

 このオールドラントという星の1年が、地球に換算すると2年近くだということもあり、なおのこと長く感じたのだ。
 そしてその間にも、私は母様からクイーン修行と言う名の虐待を受け続けてきた。


 ある時は兄妹や他の群れ(クイーン直属の群れ以外に、各地へ散らばり独自の群れを築いてきたらしい。リーダーは居るが、やはりクイーンは母様1匹だそうだ。クイーンは全てのライガにとって絶対の存在なのだとか)の子供達と共にいきなり平野に投げ出され、「1ヶ月間自力で生きろ」と言われたり。
 またある時は「これは試練だ」といきなり崖から落とされ、川に流され、そのたびに必死で住みかまで戻った。
 さらには魔物の平均レベルが高い雪山に連れていかれ「1週間過ごせ」と無茶難題をふっかけてきたりもした気がする。

 色々と思い出したくない物が多すぎて記憶があやふやだ。
 もしかすると、自分は世界各地を巡ってしまったんじゃないだろうか・・・という勢いだ。

 あれ、なんだかしょっぱい水が出てきたよ。
 私・・・私、本当によく生き残れたなあ・・・!


 そんな感傷に耽っていると、左右に居た兄妹から訝しげな視線を受けてしまった。
 畜生・・・っ君たちはいいよね!
 平野に投げ出されただけだもんね、しかもあの時だって私が譜術使って周りの魔物(チュンチュンとか)から守ってたせいで、最終的に私がリーダーになっちゃってたからね!
 ・・・なんだか思い出したら果てしなく自己嫌悪に陥った。

 思えばその出来事の後から、益々母様の虐待は酷くなったのだ。
 『まさにクイーンに相応しい手腕、流石私が見込んだだけのことはあるな!』とかなんとか言って、それはもう嬉しそうにしていらっしゃった。
 はた迷惑なことこの上ない。




 さて、なんでそんな昔話に思いを馳せているかというと。
 実は今、現実逃避をしていたりする。
 何故現実逃避なんぞをしているのか・・・ここで、私の現状を整理してみたい。


 まず、私の目の前には、私より体格がよく、少し体の大きい雄ライガが1匹、背筋をしゃんと伸ばし、おすわりの格好でこちらを向いている。
 左右は私を挟む形で、我が兄妹によってしっかりと固められており、身動ぎするのも憚られてしまうオーラが発されている。
 その場を満たすは沈黙ばかりで、張り詰める空気の中、向かい合わせにさせられた私と彼は落ち着かず、なんだか気まずい雰囲気が流れ始めていた。

 一体、何故こんな状況になっているのか・・・簡潔に言ってしまえば、母様とのとある会話が原因であった。


「カノン、数々の試練を越え、よくぞここまで成長してくれた!私にはもう何も教えることはない。これからは、自分の力で立派なクイーンになっていきなさい・・・」
「そうですね・・・否応なしに成長しないと命の危機でしたから・・・・・・というか生まれてから今まで本っ当に強制的でしたよね。あとずっと言ってますけど、絶対に絶対にぜぇーったい!クイーンにはなりませんから!そこ譲れませんから!!」
「成長して、お前もいい年頃になった。今まで修行に明け暮れて、お前にはまともに自由な時間をやれなかったが、そろそろ身をかためてもいい時期だ。クイーンたる者、将来を共にするパートナーをしっかり選ぶのだぞ」
「あっはは相変わらずスルースキルが半端ないですねー!!・・・って・・・・・・え?え、ちょって待ってください母様、いきなりなんで恋愛話になるの?え、パートナーって、お付き合い通り越してまさかの結婚話ですか?・・・・・・え?」
「まあ、まかり間違っても、この私がどこぞの馬の骨に可愛い可愛い愛娘をやるつもりはないがな!なに、いい縁談があるから安心しなさい、大船に乗ったつもりでいいからな」
「え?待って、ちょっと待ってください、脳の処理が追い付かないんですけど?・・・縁談?・・・・・・・・・は?!え、つまりそれって、あの」
「ふふ、いつもながら飲み込みが早くて助かる・・・そう、『お見合い』をセッティングしているからな。逃げたら・・・どうなるかわかるな?」

「ぜっ・・・絶対いやで「カノン・・・分 か っ た か い ?」・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・はい・・・」


 それから始まったお見合いラッシュは――それはもう、思い出すだけでげっそりするほど、凄まじかった。




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(2011/7/1)
まだまだカノンの受難は続きます。
とうとう結婚話が出てくる年齢になりましたが、何故かお見合いという…ツッコミ所満載ですね!




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