Re, Re, Re. 02
あれからしばらく経って、私はようやく現状を飲み込むことができた。
私は死んだはずだった。
けれど、死んだと思ったそのすぐ後。
何故か私は、もう一度生を受けていた。
ただし、人ではない、別の生き物として、だが。
そう、私は今、人間ではない。
分類されるならば、獣、魔物と呼ばれる存在として生きている。
地球では見たことのない、大きな狼のような、一見恐ろしい見た目をしたその魔物(というか自分を含めた家族全員)を、なんでも「ライガ」というそうだ。
はて、ライガなんて地球に居なかったはずだけど、むしろ魔物自体が存在しないはずでは、と疑問に思って「母様」――ようは母親なのだが、ライガクイーンという、ライガを統率している長(つまり女王様)だったらしいので、兄弟に習って母様と呼んでいる――に聞いてみた。
そこで発覚した新たな事実に、色々と頭が混乱したのは記憶に新しい。
ここは、地球ではなかった。
まったく別の、異世界と呼ばれる場所だった。
今、私が生きているこの星の名は「オールドラント」。
そして、この世界には「音素(フォニム)」という物質があるそうだ。
私の言うところの原子といったところだろうか。
でも、原子や元素はまた別に存在するようで、少しちがうらしい。
この音素とやらは、この世界のあらゆる生き物、有機物も無機物も含め、その全ての構成の原点にあたる、らしい。
つまり、簡単にいうと、そこらの石ころも、私の肉体も、元を辿れば音素のみということだ。
しかもその音素には第1から第7まで種類があって、属性まであるそうだ。(第7音素(セブンスフォニム)は、生物にも物体にも稀に(そして大低少量)しか含まれてなく、非常に珍しいらしい)
それを聞いて思ったことはただ一つ。
んな馬鹿な。
だってそんな、地球で生まれ育った自分に、そんなファンタジー設定すぐに納得できるはずが・・・・・・!
認めたくなくて、頭を抱えうずくまる自分をよそに、母様はとどめとばかりに要らないことも教えてくださった。
音素を上手く使えば譜術とか言うものを使えるようになるのだと。
譜術は人間が攻撃や回復の為に生み出した技術らしく、百聞は一見にしかず、ということでそれを実際に使う人間を遠目で見せられた。(強制的に人里近くに連れていかれて)
・・・一言で言おう。
Oh, my god・・・!!(ありえないありえないありえない)
いや、本当にもう冗談抜きに驚いた。
魔法としか言いようがないそれに本当にあれは普通の人なのかと疑った程だ。
遠目で見ていたその人が、なにかを詠唱し、技名をいった途端、何もない場所が
燃えた。
雷(いかずち)が落ちた。
水が逆巻いてた。
突風が吹き荒れてた。
な ん だ あ れ !
次々に起こる怪奇現象に呆然と立ち尽くすしかなかった。
それをどう捉えたのか、母様は何故か私に「譜術を練習してみるか?」などとおっしゃった。
獣でも出来るのか?!と本気で疑問に思って聞いてみると。
いわく、
「我らライガ程の知性を持っていれば、あれくらい出来る。むしろ人よりも上手く操れるものが多いぞ」
だ、そうな。
あははそれは凄いですねカアサマー、人間様をけちょんけちょんに出来ますねアハハハウフフフー。
なーんて答えたのがいけなかった。
何故か母様は、その日から私に譜術の特訓を強制してきました。
因みに同時期に生まれた他の兄姉はしてないのに私だけ。
え、あれ、なんか可笑しくない?!
そうして反論する間もなく、私の地獄の特訓は始まったのだった。
それは、私がわずか生後二ヶ月目のある晴れた日の出来事である――
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(執筆208/8/6 掲載09/1/3)
主人公、人外にプラス譜術。
ファンタジー世界の住人に着々となりつつある様子。
そういえば名前変換出てな・・・
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