Re, Re, Re. 01
薄暗く、温かな場所で私は目を醒ました。
まるで母胎の中のような優しいその空間で、私の意識ははっきりしないまま揺らめいていた。
それから疑問が浮上した。
(・・・ここ、どこ?)
もしかしたら、ここが死後の世界なのかもしれない。
生前、死んだ魂は天国と地獄のどちらに行くべきかを判決をくだすという閻魔様の元へたどり着く、と聞いたような気がするのだが、しょせん人間の想像だったということか。
これが死後の世界なのだというなら、なんと居心地のいいところなのだろう。
その暖かさに身を任せ、ゆっくりと目を閉じようとした時。
『・・・お前が最後だよ。早く出てきて、元気な姿を見せておくれ』
そんな声が、聞こえた。
何が最後?
というか、元気な姿って、そんな生まれてくる赤ん坊にいう母親のような台詞は何?
それよりなにより。
今の、声。
くぐもって聞こえたけれど、なんだか獣の唸り声のような、気がしたん、だけ、ど・・・
・・・・・・けもの?
私は閉じかけた目を見開いた。
獣の声が聞こえた。
しかもすぐ近くで!
その時の私は、それが“声”として認識出来ていることに疑問を持つ前に、獣の声が聞こえたことに恐怖してそれ所ではなかった。
しかも。
『かあさま、この子まだでてこないの?』
『もう他の子たちは3日前にはでてきたのに・・・』
『弟かな、妹かな!ねえ、かあさま、この子いつでてくるのかな?』
『こらこら、そんなに急かしては駄目だよ、驚いてしまうだろう?』
獣さんは、
複数い ら っ しゃ っ た 。
「(や・・・やばいやばいやばい!食べられる喰われる食べられる喰われる食べられる食べられるここにいたらきっといや絶対確実に食べられるに違いないあいどうしよう・・・・・・!!)」
瞬時に、私の脳内はその言葉で埋め尽くされた。
死んだ後にまで死んだら一体どうなってしまうのか。
ああ、想像しただけでも恐ろしい!
情けないことに体ががたがたと震え、恐怖が極限まで高まった、その時。
『もー、早く出てきてよー!』
耳元で、とてつもなく恐ろしい(元気な)唸り声が聞こえた。
「ッガゥアアアアアアアーーー!!(っいぃやああああああーーー!!)」
「うわあっ!?」
「きゃあ!!」
「ああもう、言ったそばから・・・ほら、驚かせてしまっただろう」
暴れた途端、腕が何か薄い壁のようなものに当たり、周囲が急に明るくなり、それと共に聴覚もクリアになった。
瞬間、狼とも何とも言えない恐ろしい生き物の顔のどアップが。
それを脳が認識したとき。
私の意識は再び遠退いていた。
――こうして私は、この世に二度目の産声をあげたのだった。
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(執筆2008/6/12 掲載09/1/2)
二度目の生は、人外でした。
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