700hitリクエスト小説
「ねぇ、チェシャ猫」
「なんだい、アリス」
問えば、腕に抱いた見慣れた首が、相変わらずのにんまり顔で返事をした。
自分で話しかけておいて何も話すことが思い浮かばず、なんとなくいつものように顎の下をくすぐってみた。
そうすると猫も、いつものようにごろごろと気持ち良さげに鳴いた。
それがいつになく可愛く、愛しく思えて、思わずくすりと笑みが零れた。
「どうしたんだい?」
「なんでもない。ただチェシャ猫が可愛いなーって思っただけ」
「カワイイ?」
にんまり顔なのは変わらないけれど、纏っている雰囲気で、不思議がっているのがわかった。
体があればきっと首を傾げているだろう。
「可愛いっていうのは、んー何て言うのかな・・・和む・・・違うな、とっても愛らしいっていうのと似てるかな。ほら、小さい子とかが笑ったり、小動物を見たりしたら微笑みたくなったりするじゃない。そんな感じよ」
「・・・ふぅん」
私の曖昧な表現でちゃんと伝わったのかはわからないけれど(きっと伝わってない)、一応納得をしているからだいたいの意味合いは理解しただろう。
そんな事を思っていると。
「じゃあ、僕からみたらアリスもカワイイだね」
猫がさらりととんでもないことを言い出した。
「・・・・・・へ?!」
可愛いなんて、家族や親戚以外、まして異性(猫を人と認識していいのかわからないけれど)に言われたことなんていままでなくて。
免疫のない私はその言葉に一瞬にして真っ赤になり、思わず抱いていた猫の頭を落としてしまった。
「痛いよアリス」
「チェシャ猫が変な事言うからでしょ!」
「変な事?」
「わ、私が可愛いとかいきなり言わないでよ!」
以外と派手な音がしたにも関わらず、全然痛そうじゃない。
ごろんと地面に転がったまま悠長に話す猫は本当に不思議そうに言葉を発した。
それを少し恨めしげに見下ろしながら、ほてった頬を冷やそうと「あー」とか「うー」など言葉にならないことを言いながら、頬より少し冷めた手を当てていた。
そんな事をしていると、猫はまた喋りだした。
「アリスは、カワイイ」
「か、可愛くないって!」
「カワイイというのはとってもアイラシイのと同じといったよ」
「う・・・っ確かにいったけど・・・・・・」
「アリスが笑えば回りの空気が明るくなって、穏やかな気持ちになるし」
「き、気のせいよ・・・っ」
「それに、アリスが幸せだと僕も幸せな気持ちになるよ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・チェシャ、猫・・・それは・・・・・・・・・」
「なんだい?」
「ううん・・・なんでもない・・・・・・」
やっぱり可愛いの意味は理解していなかったようだ。
別の言葉と意味を履き違えてる。
その、履き違えてる言葉が、なんとなくわかってしまった。
再び真っ赤になった私をみて、猫はまた、不思議そうにしていた。
いつもと同じそのにんまり顔を直視出来なくなって、ばっと視線を逸らした。
彼が言わんとする言葉は、恥ずかしくて本人には直接教えたりなんか出来ない。
出来ても絶対に教えたりはしないだろう。
だから声には出さずに心の中で、私はそっと呟いた。
チェシャ猫、あのね
それは
「好き」っていうんだよ。
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(2007/7/18)
700hitリクエスト小説、猫アリで甘口とのことでしたが…いかがでしたでしょうか東さま;
なんだか意味不明な文に仕上がった感が拭えませんね(苦笑)
猫無自覚で、そんな猫に振り回されてる亜莉子が大好きなんです…っ
このあと事あるごとに猫に「カワイイ」と言われて、「好き」と言われてる気がしてならない感じで亜莉子は慌てたらいい(何)
こんな文ですが、東鴇さまに献上いたします!
これからも末永くよろしくお願い致します。
700hit本当にありがとうございましたー!!
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