彼と出会ったのは、土砂降りの、恐ろしく蒸し暑い夏の日だった。

たまたま天気予報を見忘れたその日。洗濯物を外に干して出勤してしまい、突然しとしとと降り出した雨に慌てた。
今日は動きたくないとソファーに寝そべる駄目上司に断りを入れると、早々に帰路に着く。
勿論雨が降るなんて考えていなかった自分は、傘なんて持ってきてなくて、小走りで通りを駆けていった。
だけど途中から雨脚が強くなり、前もろくに見えなくなってしまったので、仕方なく近くの軒下に転がり込んだ。

雨に打たれて全身は痛いし、眼鏡は布という布がずぶ濡れだから、拭いても拭いても水滴が全然取れない。
そんな状態で掛けても見えにくくて、視界が気持ち悪いし意味がないしで、本当に最悪だ…と沈んだ気分で眼鏡の使用を諦め、滝のような雨を眺めていた。
 すると、ぼやけた視界になんとなく、遠くから黒い影の様なものが此方に向かってきているのが見えた。
 あ、もしかして自分と同じ目にあった人かも。ついてないなぁ、なんて考えているうちに影は近づいてきて、僕の目の前に広がる雨のカーテンを割り、影の正体はその姿を晒した。

「…先客が居たのか。邪魔するぜェ」

それが、僕と彼――僕同様濡れ鼠になった男、高杉晋助と、出会った(出会ってしまった)瞬間だった。


運命
(出会い)





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