呼んで、よんで

 私の、名前を




「・・・ボス、私の名前を呼んで」
「へ?」


 突然のお願いに、ボスは綺麗で大きな琥珀の瞳を丸くした。
 本当に突然だから、驚くのも無理はないと思った。


「急にどうしたんだよ」
「別に・・・・・・ボスに・・・呼んでほしくなったの」
「・・・うーん・・・・・・まぁ、別にいいけど・・・えっと、

 クローム 」


 ズキンッ


(・・・くろー、む)


 自分で頼んだ癖に、有り得ないことに期待して傷付くなんて。

 我ながら自分勝手。

 そう、頭ではわかっているのに。


 何故かとても悲しくて。
 苦しくて。

 ぽろり、と、私の瞳から涙が溢れ出した。


「!?く、クローム・・・!?」

(違、う・・・私は・・・・・・)

「え、どうしたの?!」

(私の、なまえは)

「な・・・ちょ、どっか痛いとか・・・!」

(なまえ、は)

「なあ、くろ・・・ぅわ!?」
「違・・・違うの・・・・・・っ!」




 ボスの言葉を遮って、私は思いっきり強くボスに抱き着いた。
 その“名前”を聞きたいわけじゃないから。

 だって、私の名前は“クローム”なんかじゃない。
 私の名前は、本当の名前は“凪”なのだから。

 でも

 私を必要としてくれた、あの人が与えてくれたのは"クローム・髑髏"という名。
 だから今の私は確かに“クローム”で。
 それでもやっぱり、“私”の名前は“凪”だから。


 大切な、貴方に。
 大好きな、貴方に。
 愛しい、貴方に。

 私を、“凪”を呼んでほしくて。


(ああ、私は)


(なんて愚かで、欲張りなんだろう)




 教えてもいないのだから

 呼ばれる事など、ありは、しないのに。









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(2007/7/15執筆 8/7)
髑髏ツナアンソロジーが届いてテンション上がって勢いで書いちゃった小説(え)

クローム・髑髏って名前は骸から貰ったからそれはそれで大切なんだけど、好きな人にはやっぱりちゃんと自分の名前を呼んで欲しくなって…
みたいなクロームちゃんの複雑な乙女心を書きたくなっただけです
ええ、見事撃沈ですが(笑)
どうでもいいですが、未だに髑髏ちゃんと言うか、クロームちゃんと言うかで迷います←

サイトにupするべきかしないべきか迷ってました(だって駄文/死)




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