今日は好きな人の誕生日。
 だから、何かプレゼントをあげようと思った、んだけど・・・


「・・・っあーもー!うまく出来ない!」


 そのプレゼント作りに、俺、沢田綱吉只今苦戦中です。




恋 の ぼ り




 今日は5月5日、こどもの日。
 以前ハルが強引にインタビューして教えてもらったのを、俺は密そかに覚えていた。
 だって、実際の年齢も不明だし、血液型とかなんにもわからなくて実はちょっと悲しかったから、誕生日だけでもわかって嬉しくって・・・
 ・・・ってちょっと待って俺なんかすっげー女々しい・・・!!
 そ、それは置いといて!!

 とにかく!

 誕生日プレゼントを何かあげたくって、母さんに手伝ってもらいながらある物を作っている最中だったりする。
 ビアンキが手伝うって言って聞かなかったけど、そこはなんとか阻止した。

 ・・・でも、こんな物で、き・・・恭弥、さん、喜んでくれるかな・・・
 ・・・!か、顔赤いとかほっといてよ!!
 まだ言い馴れてないんだから仕方ないだろ!


 ―――約一時間後


「あらっ上手に出来たじゃない!さすが私の息子ね〜」
「そ、そうかな・・・」


 嬉しそうにはしゃぎまわる母さんに褒められて、なんだか照れ臭くなって曖昧に笑った。
 でも、実際見た目とかちょっと凄いんだけど・・・っていうか今更だけど、これってプレゼントに向いてない気が・・・・・・

 ・・・・・・大丈夫だろうか・・・

 不安になりながら、俺は出来上がったばかりのそれをラッピングし、恭弥さんに渡しに行くため玄関を飛び出した。
 ――恭弥さん、喜んでくれるかな・・・と、不安と期待に胸を膨らませながら。


◇ ◇ ◇


 しばらくして目的の場所についた。
 俺の目の前にあるのは並盛中の応接室の扉。
 休日の日も仕事があるらしく、今日もここにいるといっていた。

 ・・・・・・やばい、心臓バクバク鳴ってる・・・っ

 今更ながら緊張して震える手を、ぎゅうっと胸の前で握りしめ目を閉じ深呼吸をする。
 少しだけ落ち着いたのを確認して――いつもならこんなに緊張しないのに――意を決して、俺は扉を叩いた。


「入りなよ」


 間髪入れずに返ってきた返事に一瞬肩をびくつかせたけど、不自然に思われないように直ぐに返事をしてその扉を開けた。


「し、失礼しまーす・・・」
「やあ、綱吉。よくきたね」


 部屋に入って一番始めに目に飛び込んで来たのは、つり目がちで一見冷たい印章を受ける黒の似合う風紀委員長様こと雲雀恭弥さんの微笑みだった。
 まずその顔にノックアウトしそうになったけど、今日はプレゼントを渡すという最大の難関が・・・!


「ひ・・・恭弥さん、お仕事お疲れ様です!」
「これぐらいの仕事、いつものに比べたら少ないよ」


 くすりと笑う恭弥さんにまた心臓がバクバク言い出して、なんとなく気恥ずかしくなって俯いてしまった。
 カタンと音がして、恭弥さんが席を立ったのが分かった。
 ゆっくりと近づいて来た恭弥さんは、俯いている俺の耳元でそっと囁いた。


「綱吉はほんとに可愛いね。・・・それはそうと、その紙袋は何?」


 中々収まってくれない心臓を恨めしく思いながら、血が集まりほてった頬を冷やそうと自分の手でぺちぺち叩き、なるべくいつも通りになるようにと願いながらゆっくりと言葉を紡いだ。


「あ、の、今日は、恭弥さんの誕生日だから・・・こ、これ、プレゼント・・・なんです・・・」


 なんかもう恥ずかし過ぎて最後の方は声がすぼんでしまった。
 ああもうなんで俺こんなにへたれなんだ・・・!!


「・・・ワォ、覚えてくれてたんだ」
「あ、当たり前じゃないですか!好きな人の誕生日ぐらい覚えてますよ!!」


 力いっぱい叫んで勢いで顔をあげると、嬉しそうに目を細めて笑う恭弥さんの顔が近くにあった。


「・・・!!」
「君はほんとに嬉しいこと言ってくれるね。・・・じゃ、有り難く貰うよ」
「え、あ、はい!どど、どうぞ!!」


 顔面アップにまたもややられそうになりながら、持っていた紙袋を差し出す・・・というより押し付けるような形でに恭弥さんに渡してしまった。
 そうやって慌てる俺とは反対に、恭弥さんはいつものように落ち着いた雰囲気で、俺ばっかりあたふたしてるのが余計恥ずかしくなった。
 そうこうしてるうちに受け取った紙袋を恭弥さんが開けていて・・・


「・・・・・・これ・・・」
「た、誕生日にパンは可笑しいかな、とは思ったんですけどね?他に思い付かなくって、ええと、その、今日はこどもの日でもあるからその・・・一応こいのぼりを、作ってみたん・・・ですけど・・・・みえないですよね〜・・・・・・」


 自分で言ってて悲しくなってきて、あははと空笑いが漏れた。
 そう、俺が作っていたのはこいのぼり型の菓子パン。
 母さんが見ていた雑誌に載っていた物で、たまたま覗き込んで目に入ったのが、これだった。

 そういえばこどもの日って恭弥さんの誕生日だった・・・プレゼントまだ買ってないよどうしよう・・・!などと思いながら見ていたら、母さんが一言。

「あら、それ可愛いわね!ツナ、母さんと作ってみない?」

 そう言われて、そうだ、丁度プレゼントにいいんじゃないかな?・・・と思い作ったのだ。
 菓子パン作りなんか初めてだし、不器用な俺には結構難しい物だったけど、試行錯誤しながらなんとか出来上がった。
 けど、やっぱり形は悪く、言われたらこいのぼりとわかるかわからないかって感じで・・・
 黄金色に焼き上がったそれをじっと見つめて動かない恭弥さんに、だんだん不安になってきた。


「・・・やっぱり、こんなのもらっても、嬉しくない、ですよね・・・」


 頑張ったけど、それを気に入ってもらえないならしかたない。
 それにいくらプレゼントとはいえ、パンなんか貰っても嬉しくないだろう。
 なんだか惨めな気分になってきて、少しだけ涙が滲んできてしまった。


「嬉しくないなんて、言ってないよ」
「・・・そうですよねー・・・・・・って、え?」
「聞こえなかったの?君から貰ったものなんだから嬉しくないわけないだろ」


 知らない間に目尻に溜まっていた涙を、恭弥さんはその綺麗な長い指で拭いながら言った。


「一生懸命作ってくれたんでしょ?それだけでも嬉しいんだから・・・それに」
「ぅ、わ・・・?!」


 一端そこで切って、恭弥さんは俺の事を抱きしめ優しく頭を撫でてくれた。
 それだけで俺はなにもかもが満たされたような、とても幸せな気分になった。


「僕は綱吉の笑顔が見れるなら何もいらないよ」


 だから、笑って?


「・・・はい!!」


 その言葉が本当に嬉しくって。
 嬉しすぎて涙がまた出てきそうなぐらい胸が幸せでいっぱいになって。
 でも笑顔が好きだといってくれた恭弥さんのために、俺は飛び切りの笑顔を返した。


「恭弥さん、誕生日おめでとうございます!」


 生まれてきてくれて、本当にありがとう――




 それから恭弥さんの仕事が終わるのをソファーに座りながら待って、他愛もない話をしながらのんびりと帰路についた。
 夕暮れ時で、人通りもまばらな道路を二人で手を繋いで帰る。
 それだけで俺の心臓は激しく暴れるから、繋いだ手から伝わってしまうんじゃないかと心配してしまった。


「・・・そうだ、一番欲しいものがあったんだ」


 唐突にそんな事を恭弥さんがいうから、俺は妙にうろたえてしまった。


「え?!な、なんですか?!・・・やっぱりパンは駄目でした?」
「違うよ・・・綱吉ちょっとこっち向いて」
「へ?」


 言われたとおりに恭弥さんの方を向くと、顎を掴まれたかと思うと黒いさらさらの髪と綺麗な顔が視界いっぱいに広がって――


「・・・っな、き、きょう、やさ・・・っ?!」
「――ごちそうさま」


 ちゅっと音を立てて離れた恭弥さんは、その唇を舌で舐めると意地の悪い顔でにやりと笑った。
 その仕種さえも綺麗で、真っ赤になった俺の顔は更に熱を帯びてしまった。


「・・・なに、続きもしたくなっちゃった?」
「ち、違いますから!!」


 そんな会話をしつつ。
 俺はこの二人で過ごす甘い時間を、ゆっくりと幸せを噛み締めて過ごした。


 願わくば、来年も再来年も、その先もずっと同じ時を過ごさん事を――





HAPPY BIRTHDAY!!





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(2007/5/5)今日は5月5日こどもの日、そして何と言っても雲雀さんの誕生日!!
なので張り切っておめでと小説書いた、はいいけど…なんかつっくん視点だから祝えてるのかよくわからないよ…!!
そして勢いで一日で書いたから落ちが…!!
なんでこいのぼりパンかといいますと、今朝TVを見ていたら小さい子が作っていたからというそんな理由だったり…ゲフゴホ
後題名ね、他サイト様でも同じ考えの人を発見してしまいました…もうちょっと捻ればよかったかな…orz
というか、私は周りがディノヒバとか山獄とかムクヒバとかいってても、一番好きなのはヒバツナ、ムクツナ、ツナ総受けむしろ雲綱骸サンドが大好物なんだー!!!(何)
うん、まあ、叫びは置いといて。
雲雀さん、本当に誕生日おめでとうございますー!!てか久々に小説書いたな…

6/24 一部訂正




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