02
暫くして少年とよく似た女性が顔を出した。
少年の話していた姉上だろう。
とても綺麗な人だった。
「これ、私のお下がりで申し訳ないのだけど」
そう言ってクリーム色の赤い花が模様綺麗な着物を着付てくれた。
「すみません、私…」
「ふふ、謝らないで。歳が近い女の子と話せるのはとても嬉しいの」
彼女の笑顔はとても眩しかった。
見ず知らずの、怪しい女なのにただ私の話を聞いて信じてくれた。
家が無いなら一緒に暮らせばいいと言ってくれた。
彼女の隣に座る少年の顔は不服そうだったが、行く当ても無い私は
彼女の好意に甘える他なかった。
彼女は沖田 ミツバというらしい。
少年は、
「総ちゃん、お名前言えないの?」
「怪しい女に名乗れる名はありません、姉上」
まぁ!と驚き咎めるミツバさんに「いいんです」と言うと
とても申し訳なさそうに謝られた。
「あの、なら総くんと呼ばせてもらってもいいですか?」
「…ふん、それならいい」
相変わらずの仏頂顔に苦笑いしてしまったが、この少年の反応こそが
最もなのだと痛む胸に言い聞かせた。
いくら自分が彼等を知っていても彼にとっては異質な存在なのだから。
夕飯の用意をすると言ったミツバさんの後を着いていった総くん。
「まさか、1番好きな漫画の世界だなんてなぁ…。
それもこんな、10代に若返るなんて」
鏡を見て酷く驚いた。そこにいたのは15歳の自分だったのだから。
少年の事だって知っている。
沖田 総悟。恐らくここは武州。今の彼は、7〜8歳くらいだろう。
1番好きなキャラに嫌われるのは結構悲しい。
あ、今はキャラっていう表現はいけないのかな。
一人だといらない事を悶々と考えてしまう。
「よし!手伝いしよう!」
頬をパチンと叩いて二人のいるであろう台所に向かうのだった。
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