さよなら、私の
「まさか、受けるつもりかい?」
閉店の片付けをしていると、お母さんが寂しそうな顔で聞いてきた。
「…ちょうどいいと思うの」
家族以上にはなれない。銀さんはちゃんと気持ちを教えてくれたのに、私がずっと引き摺っていては困らせるだけなのだ。
「お母さんにも早く孫の顔見てもらわなきゃいけないしね」
わざとらしく明るい声で言ったのを知っていても、お母さんは何も言わずに私の頭を撫でるだけ。
そんな優しさが切なくて涙が溢れそうだった。
いつか銀さんを思い出に出来る日が来るのだろうか。
そんなことを思いながら、私の心は沢山の思い出で溢れていた。
優しく名前を呼ぶ声も、守ってくれる逞しい腕も、少し子供のようなところも、
不器用で自分を犠牲にしてしまうところも全部全部忘れて思い出にしていこう。
「前に進まなきゃ」
励ましのような呟いた言葉が少し虚しく思えた。
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