いってらっしゃい
銀ちゃんが突然姿を消してもう5年が経とうとしている。銀ちゃんがいなくなって改めて彼の存在の大きさに気付かされた。みんなばらばらになってしまったのだ。
神楽ちゃんも新八くんも、みんな。
「銀志(ぎんじ)、もう戻るよ」
「まだ父ちゃんに話したいことがあるんだっ!」
彼に似た顔立ちで、髪色まで同じなのに天然パーマではなく風にさらりと靡くストレートな髪。
この髪をみたら、銀ちゃんは喜んでくれるだろうか。
小さな手を合わせ、自分の父親の墓石にむかっていったいどんな話をしているのだろう。
「ねぇ母ちゃん、俺父ちゃんの代わりに母ちゃんのこと護るからね!」
「ふふ、頼もしいね。お父さん凄く強かったのよ?」
「知ってるよ!新八が言ってたもん。だから僕も強くなる!」
自分の身体より遥かに大きな木刀を抱き締めて、満面の笑みを浮かべる。
「よォ、ボーズ」
「父ちゃん!」
後ろを振り向くと見慣れた着流し。けれど全く違う人物の彼。珍さん、彼は酷く似ているのだ銀ちゃんに。
「おいおい、父ちゃん今墓にいんだろ?」
「でも、珍さん父ちゃんに似てるんだもん」
うつ向いて少しだけ泣きそうな顔をする。私の着物を強く握って必死に涙を堪えてる。
「母ちゃん護るんだろ?泣くんじゃねェよ」
そういって優しく銀志の頭を優しく撫でる姿に一瞬、銀ちゃんの姿が見えた気がした。
「なっ、泣いてない!」
「そうかい。まァ、頼んだぞ母ちゃんのこと」
私の頭をポンと撫でて去っていくその姿に思わず声を荒げてしまった。
「銀ちゃんっ!」「父ちゃんっ!」
「…名前、銀志いつか未来で必ず」
やっぱり、変わってないね銀ちゃん。
「絶対だからな、父ちゃん!」
「…いってらっしゃい」
それまで私は銀ちゃんと私の宝物と待ってるから。早く迎えに来てね。
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