04
次の日の朝早くに新八くんがお見舞いに来てくれた。新八くんがというより、万事屋さんがと言った方が正確だろう。
彼等は定食屋にちょくちょく遊びに来てくれた常連客。お金のない時期はただ飯をたかりに来て、店を手伝ってくれたものだ。
「思ったより元気そうで安心しましたよ」
「泣きわめいてんのかと思ったけどな」
ちょっと銀さん!なんて新八くんが顔をしかめる。とうの銀さんは頭を掻きながら、昨日そうちゃんが置いていったお菓子を漁っている。
相変わらずだな、と思っていると1人俯いたままの神楽ちゃん。
「神楽ちゃん?」
声をかけると目にいっぱい涙を溜めて、痛いほど私を抱き締めて「ごめんなさい」と呟いた。
彼女が謝る理由など見当たらない私は、どうしたの?と問い掛けることしかできない。
「泰助くんを連れていったの、神楽ちゃんのお兄さんなんです」
新八くんの言葉に神楽ちゃんの体がピクリとはねる。思わず神楽ちゃんの頭を撫でる手が止まる。病室には銀さんがんまい棒を食べる咀嚼音しかしない。
「そう…。気に病ませてしまったのね」
私の言葉に神楽ちゃんは勢いよく顔をあげた。
「私のバカ兄貴のせいネ!なまえのこと泣かせたのは、私の…!」
「確かにそうかもしれない。でも、また探せばいいの。泰助は待ってる筈だから。依頼すれば引き受けてくれるんでしょ?」
ね?と神楽ちゃんに言うと彼女はいつもの笑顔で「もちろんアル!」と言った。新八くんも笑って、銀さんも心なしかホッとしたような顔で。
「今日退院なんだろ?」
銀さんが話の流れを変えるように尋ねた。あ、そういえばそうだった。
「うん、そうちゃんが迎えに来てくれるの」
すっかり元気になった神楽ちゃんがお菓子を漁る手を止めて、顔をしかめる。
「なんでサドが来るアルか」
「サドって神楽ちゃん…。お登勢さんが言ってましたけど、今日お登勢さんのスナックに来るって」
そんな神楽ちゃんをなだめるように、新八くんが話す。ああ、と私が言うと銀さんが手にしっかりチョコレートを持ったまま
「寝る場所どーすんだよ。家売っぱらったんだろ?」と話した。
「じゃあ、万事屋に泊まるといいネ!一緒にいられるアル!」
「おいおい、勝手に言うんじゃねーよ。銀さんの家だからね」
「まともに家賃払ってから言えヨ」
神楽ちゃんと銀さんの口喧嘩が始まって、新八くんがとめにはいったころ病室のドアをノックする音が。
新八くんが戸を開けると、そうちゃんが手に何かを持って立っていた。
「そうちゃん、早かったね」
私の言葉にそうちゃんは優しく微笑んだ。
「これ、女中が旨いって話してて。なまえさん確かケーキ好きだったと思いやして」
照れたように私に渡す。ありがとう、と受け取ると満足そうにした。
私達を見て固まったままの万事屋さん達。そうちゃんは「退院の準備まだだと思いやしたんで、俺万事屋の旦那達と外で待ってやすから」と言って皆を連れて外へ出ていってしまった。
皆が外へ出ていった後、準備をしようと立ち上がり準備を始めることにした。
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