02
目を覚ますと白い天井。あちこち痛む所を思うと夢ではなかったのだと思い知らされる。
じわりと目頭が熱くなってくる。
行ってしまった。
真っ先にそう思った。優しいあの子は私の血を見て行ってしまった。
カーテンで仕切られた空間の中で必死に声を殺して泣いた。誰にも気付かれないように。悟られないように。
コツコツとカーテン越しから足音が聞こえる。聞きなれたような声がして、急いで涙を拭いウエットテッシュで気休め程度に顔を拭く。
「起きたんだね、なまえちゃん」
カーテンから顔を出したのは真選組の局長さんでもある、近藤さん。
「はい、ご迷惑をおかけして」
そう言いかけると同時に勢いよく飛び込んでくる人物がいた。
「そうちゃん」
「心配しやした」
優しく頭を撫でると更に力を込めてきて、苦しいけれど嬉しかった。彼もまた弟のようなものだから。
「総悟は相変わらずなまえちゃんにべったりだな」
まるで父のような笑顔で言う近藤さんになぜだか拭ったばかりの涙が零れた。
「無事で、良かった」
そうちゃんの呟きにパチンと泡が弾けたように声をあげて泣いた。弟のように思っていたはずのそうちゃんの手が大きく感じて男の人なんだと認識させられた。
泰助が、と言うとそうちゃんは「わかってやす」とそれだけ。近藤さんに視線を合わせても悲しそうな顔で頷くだけ。
二人の優しさが悲しいほど痛かった。それと同時に思い出してしまった。私は転生してきたのだと。前世では弟などいなかったし、ましてや物心つく頃から親すらいなかった。
そうちゃんの背中に手をまわして、しがみつくようにしながら目を閉じた。
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