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  01


私はみょうじなまえ。2X歳になりますが、16の弟がいます。
大層聞き分けの良い弟で、気立てのよい優しい父と仲良く暮らしていました。

「姉さん、ゴミ出しとくね」

「あ、泰助ありがとう」

厨房から顔を出して言うと弟はふわりと笑って「うん。」と言った。

弟の名前は泰助。剣術をならっていて、寺子屋で一緒だった新八くんの話によれば弟は剣術なら誰にも負けないのだと。確かに素質はあったのかもしれません。
新八くんが目を輝かせて弟はなんだか照れ臭そうにしていたのを見て、微笑ましく思ったのを覚えています。
なぜ剣術を続けるのか、と聞けば「姉さんや父さんを守るためさ。そしていつか新八くんの道場の復興の力になりたい」
力強い眼差しでそう言いました。
不束ながら母親代わりをつとめた私にとって嬉しい言葉でした。

その数ヶ月後、父が病に倒れそのまま還らぬ人になりました。
小さな定食屋では父の病を治す治療費すらままならず、父はもうやめなさい、とだけ。
それから程なくして、天人が店に押し掛けてきました。
なんでも弟が欲しいのだと。弟はきっぱり断りました。もちろん私も。

「答えなんかいらないヨ」

にこりと笑っているはずなのに、目は笑っていない。そんな事を思った刹那。弟が私を呼ぶ声が聞こえた。答えることが出来ない。
必死に私を呼ぶ。大丈夫、大丈夫よ泰助。そう言いたいのに。

弟の服に染み着く血を見て、自分のものだと気付くのに時間はいらなかった。

ごめんね、姉さん

優しく笑う弟を見たのを最後に私の意識が消えた。

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