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  見えなくなる。わからなくなる。



最近なまえの様子が可笑しい。どう言えばいいのかわからないが、どうにも可笑しい。

総一郎君に聞いてみても、仕事はちゃんとやっているし悩んでいる素振りもないらしい。

「あぁ、そういえば泰助の部屋で何か探してたみたいですぜ」

「泰助の?」

思い出したように言えば、どうにも‘晋ちゃん’と呟いていたとか。

「…何か忘れてる気がする。
最近のなまえさんそんな事言ってた見たいですがねィ」

「部分的な記憶喪失ってか?んな馬鹿な話があるかっての」

「高杉となまえさんが繋がるんでさァ」

「馬鹿言うんじゃねぇよ。アイツは…なまえは関係ねぇだろ」

これ以上何かを話すのは嫌で、さっさっと退散しようと歩きだそうとした。

「泰助が残していった日記に書いてあったんでィ。

‘姉さんから高杉晋助の記憶を消さないと、姉さんがいなくなってしまう’って」

思わず後ろを振り返る。

「アイツは少なくとも自分が狙われているのを知ってたようですぜ。
この日記が本当ならの話ですがねィ」

ヒラヒラと一冊のノートを揺らして、呆れたような風に言う。

「その話知ってる奴は」

「近藤さんと土方さんとザキだけでさァ。なまえさんは知りやせんよ」

彼女の耳に入るのも時間の問題かもしれない。そう思うと、べっとりと染み付いた汚れみたいに胸糞悪く笑う高杉の顔が頭の片隅から離れなかった。

「大切にすればするほど、零れていくんでィ。嫌になっちまいますねェ」

そう言って少し悲しそうに笑う総一郎君の横顔が、自分に重なる気がして酷く胸が痛んだ。




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