01
記憶が抜けている。一時期の記憶がすっぽりと。
そう感じたのは泰助がいなくなって、数ヶ月した頃。
そしてそれを確信したのは、私の手元にある一冊のアルバムを見てから。
『…迎えに行くから』
記憶の奥底で笑う晋ちゃんの顔が思い出せない。もやがかかっているみたいに。
「晋ちゃん…」
消えそうな声で呼んでみたけれど、何も思い出せない。
‘約束’だけが脳裏に焼き付いている。
私と泰助が写った写真。しかし、それは不自然に破られたもので。私の隣にいる筈の人物をまるで隠しているように。
「泰助が何か隠している?」
写真の下に書かれた‘しんすけ’の文字がやけに胸をザワつかせた。
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