03
『姉さんは危機感がないよ』
いつだったか、泰助がそんなことを言っていた。
私は「そんなことないよ」、なんて笑っていたけど。
「じゃあ終わったら銀ちゃんが来るから、連絡するアル」
「面倒かけてごめんね」
屯所の前で定春に跨がる神楽ちゃんに、申し訳なく思う。
「何言ってるアル!ストーカーなんて女の敵ネ!」
「ストーカーなんてそんな…みんなの思い過ごしだと思うよ」
そう言って笑えば、神楽ちゃんは何故だか呆れたような顔をして「これじゃあ銀ちゃん苦労するアル…」と言った。
たまに大人びたことを言うもんだから、やっぱりドラマの見すぎなのだろうか。
そんな事を考えながら、神楽ちゃんの背中を見送る。
「ストーカーってどういうことですかィ?」
「あ、そうちゃん」
そうちゃんが心配そうに、声をかけてきた。私は慌てて弁解する。
「それがね、皆九兵衛さんの所の東條さんが私をストーカーしてるっていうの」
考え過ぎだと言ってるんだけど、と言葉を続けるとそうちゃんは溜め息を一つついて
「もしかして、買い物してて良くバッタリ会って『いやー偶然ですねー。お茶でも行きましょう』なんて言われてやせんか?」
「え!どうしてわかるの?」
私の驚いた顔を見て、そうちゃんは「ストーカーはストーカーでも危害をくわえないと思いやすよ」と笑って言った。
(流石に近藤さんと同じタイプだなんて言えねェや…)
そんなそうちゃんの心の内なんて私は知るよしもなく、ホッと胸を撫で下ろした。
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