さがしものはなんですか?
「晋助、例の“さがしもの”とやら見つけたでござる。
白夜叉、真選組と一緒のようだ」
「ほう…」
キセルを吹かしゆらゆら揺れる煙。万斉からは高杉の表情が見えず、僅かに揺れる肩を見て笑っているのかと思える位だった。
「…して、今回はどんな策を用意しているのか」
高杉は振り返り、心底楽しそうな顔をして
「取り戻す。それだけだ」
そういって煙を吐き出した。
月の光に照らされ、ニヤリと笑う高杉に万斉の背筋はぞくりと冷えるのだった。
「主もこのような甘いラブソングを奏でられるとは驚きでござる」
ククッと笑う高杉の真意はわからなかったが、機嫌を損ねなかったことは確かだった。
これ以上余計な詮索はやめようと立ち上がり、その場を去ろうとする。
「ラブソングねぇ…本当にそう聞こえるか」
「ロックではないことは確かでござるよ」
いつも奏でる高杉の曲調とは違うのだ。そう万斉が告げると高杉は黙りこんだ。
さがしものがある。
高杉から聞いたのはつい先日のこと。
泰助という転生族の生き残りを連れてきてからだ。
どうやらその生き残りの姉らしい。高杉の女の噂など絶えず万斉は聞いていたが、そのさがしものとなると曲調が変わるのだ。
高杉らしからぬ甘いラブソング。
しかし、さがしものがどれだけ高杉に影響を与えているのかなど、今の万斉には1ミリも興味がなかった。
「どんな修羅になることやら、今度のロックは楽しみでござる」
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